結果2-1:式内社数の多寡に影響すると思われる要因・・・・面積
米子(西伯耆)・山陰の古代史
式内社数の多寡に影響すると思われる要因としては以下の項目が考えられる。
   1:令制国の面積が小さい。 
   2:令制国の人口が少ない。
   3:郡数、郷数が少ない。
   4:経済力が弱い・・・・農業力、林業力、鉱工業力など
   5:都(中央)からの距離が遠い。  
   6:律令が定めた国力
   7:歴史的素地がない。
   8:その他 ・・・・政治色、人間(氏族)関係など(考察へ)

令制国の面積と式内社数の関係において、絶対的な面積が小さければ、そこに収まる式内社数にも何らかの影響が考えられるかもしれない。
本来は、平野部分の比率、河川の存在、地政学的な位置などの質的な検証が必要かもしれないが、ここでは単純に量的な国の大きさと式内社数の関係を比較、検討する事を試みる。

A:令制国諸国の面積
    1:令制国の面積と式内社
    2:令制国諸国の面積ー道別の面積、諸国の面積

B:令制国の面積と式内社数の関係
    1:令制国諸国の面積と式内社数の検定
    2:令制国諸国の面積と式内社数の関係

  参考 : 延喜式と式内社  和名類聚抄と国・郡・郷  令制

A:令制国諸国の面積
1:令制国の面積と式内社
国土面積と式内社数
面積が狭小な令制国では、式内社数も少なくなることが予想されるが、果たしてそうか否かの検証を行う。
極端に面積が狭い国では、そこで暮らす人々、産出される農産物も少ないことが予想される。
その場合、式内社の維持運営にも何らかの影響が考えられる。
式内社数に国土面積が関係するか否かの検証である。

結果をグラフで示し、P値によって色分けをした。
青色 有意差無し(平均値より多いといえる)
オレンジ色 p<0.05 (有意差あり、平均値より少ないと言える)
赤色 p<0.01 (有意差あり、平均値より極めて少ないと言える)

補足
面積は方里から㎦に換算して示した。(1方里 ≒15.423471㎢)
なおこれらの面積は明治15年『統計年鑑』に記載されているものであり、伊能忠敬の大日本沿海輿地全図の大図(縮尺1/36,000)などを基に算出されている。
明治時代の面積ではあるが、大宝律令が制定された701年から廃藩置県が行われた明治4年まで令制国の国土に大きな変更がなかったことを基礎にして当時の令制国の面積として参照した。


2:令制国諸国の面積
道別の面積
畿内の面積が最も小さく、東山道の面積が最大であった。
山陰道の面積はP<0.05で有意に小さかった。
   
畿 内
5ヵ国
東海道
15ヵ国
東山道
 8ヵ国
北陸道
 7ヵ国
山陰道
 8ヵ国
山陽道
 8ヵ国
南海道
 6ヵ国
西海道
11ヵ国
面積(㎢) 6,872 41,035 105,609 25,186 17,117 24,235 24,666 43,660
国数 5 15 8 7 8 8 6 11
郡数 53 128 113 31 52 69 50 96
郷数 349 1009 735 230 387 498 324 509
式社数 545 703 366 336 530 127 156 98
式内社平均 90.8 46.9 45.8 48.0 66.3 15.9 26.0 8.9
面積(方里) 446 2,661 6,848 1,633 1,110 1,571 1,599 2,831
面積Z検定P値 0.00342 0.67806 1.00000 0.15703 0.03966 0.13678 0.15866 0.75977
  

   


畿内、東海道諸国の面積
道別には畿内の5ヵ国の面積平均は有意に小さかったが、大和国だけは全国平均を上回っていた。
式内社数が2社と最も少なかった志摩国の面積は全国で2番目に小さかった。

  

東山道、北陸道諸国の面積
東山道諸国の面積は全て全国平均を上回っていた。

  

山陰道、山陽道諸国の面積
山陰道では、丹後、但馬、因幡、伯耆、出雲国が全国平均「以下面積であった。
   

南海道、西海道諸国の面積
壱岐国は68ヵ国中、最小の面積であった。
  

B:令制国の面積と式内社数の関係
1:令制国諸国の面積と式内社数の検定
1方里当たりの式内社数を算出し、その検定を行った。
Z-test(平均値の検定)で各国の面積(1方里)当たり式内社数が平均値より多いか少ないかの検定を行った。
結果をグラフで示し、P値によって色分けをした。

青色 有意差無し(平均値より多いといえる)
オレンジ色 p<0.05 (有意差あり、平均値より少ないと言える)
赤色 p<0.01 (有意差あり、平均値より極めて少ないと言える)


五畿七道の面積当たりの式内社数
10方里(=154.2?)当たりの式内社数を下記グラフに示した。
畿内は単位面積当たりの式内社数が最も多かった。

   
   
畿内、東海道の式内社数:面積比
畿内では全ての国において1方里当たりの式内社数が多かった。
   

東山道、北陸道の式内社数:面積比
東山道では、近江国を除き全ての国で1方里当たりの式内社数は少なかった。
   

山陰道、山陽道の式内社数:面積比
山陰道全体では、全国平均より式内社数が多い国が多かった。
その中で、伯耆国は有意に少なかった。
山陽道では全ての国において1方里当たりの式内社数が少なかった。

   
 
 
南海道、西海道の式内社数:面積比
南海道、西海道の双方において、ほとんどの国で1方里当たりの式内社数は少なかった。
しかし、壱岐、対馬の式内社数は突出して多かった。

   


2:令制国諸国の面積と式内社数の関係
令制国諸国の面積と式内社数の相関関係
令制国諸国の面積と式内社数の相関係数rは0.08で、相関関係は無いと言える。
すなわち、式内社数はその国の国土面積に影響されないことが示唆された。

   

参考資料-1
式内社数と国土面積の検定表

令制国  延喜式と式内社  和名類聚抄と国・郡・郷


参考資料-2
「和名類聚抄郷名考證」 (吉川弘文堂 1966 池邊彌)
「和名類聚抄郡郷里駅驛名考證」 (吉川弘文堂 1981 池邊彌)

「人口から読む日本の歴史」 (鬼頭宏著 講談社学術文庫 2000年 )
「図説人口で見る日本史」   (鬼頭宏著 PHP研究所 2007年)
歴史人口学で見た日本」  (速水融 文春新書 2001年)



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