1:緒言(目的)
伯耆国の神階奉授神祇を検討することで、『延喜式』が編纂される以前の伯耆国の式外社および当時の社会情勢等に関する考証を行う。


2:材料と方法
材料・・・・文献的史料
 神階神位授与の初見は、天武天皇元年(672)壬申の乱に際して霊験を現した大和国の高市御県坐鴨事代主神、牟狭坐神、村屋坐弥富都比売神に位を授与したとする記載に始まるが、その階位が明らかではない。
 よって今回は、伯耆国の神階奉授の背景を探るべく、階位が明らかな天平三年(731)の越前国敦賀郡気比神に対して従三位を与えたとされる記事から、『日本三代実録』の記載が終了した仁和三年(887)までの奉授神祇を検索対象とした。
 奉授神祇の検索は、主として岡田荘司著『古代諸国神社神階制の研究』(2)を用い、併せてその他の史料(3)(4)(5)(6)で補足した。
 尚、奉授記録の無い志摩国、大隅国は検索の対象から除外し、66ヶ国を対象に検索を行った。

(1) 八尾正己 『伯耆国および他の令制国の式内社に関する推計統計学的考察』 伯耆文化研究 2011 第13号 p66-86
(2) 岡田荘司 『古代諸国神社神階制の研究』  岩田書院 2002
(3) 黒坂勝美 『新訂増補国史大系・交替式・弘仁式・延喜式前篇』 吉川弘文館
(4) 渡辺直彦 『日本古代官位制度の基礎的研究』 吉川弘文館 1972
(5) 『鳥取県史』 第一巻 原始古代 1972
(6) 『鳥取県神社誌』 澤田文精堂 1934
(7) 荻原千鶴 『出雲国風土記』 講談社学術文庫 1999
(8) 上田正昭 『神階奉授の背景』 吉川弘文館 1981
(9) 松岡晶 「平安初期の官社制度」 高円史学 Vol.13 p95-111
(10) 巳波江利子 「八・九世紀の神社行政-官社制度と神階を中心として」 寧楽史苑, 1985, 第30号, pp.22-57 
(11) 黒田一正他 『山陰の神々』 今井出版 2011
(12) 誉田慶信 『中世奥羽の民衆と宗教』 吉川弘文館 2000
(13) 判信友 『神名帳考証土台』 判信友全集1 国書刊行会 1907
(14) 『新修米子市史』 第一巻 通史編 原始・古代・中世 2003
(15) 池邊彌 『和名類聚抄郡郷里驛名考證』 吉川弘文堂 1981
(16) 谷川健一、坂田友宏他 『日本の神々-神社と聖地』 第7巻山陰 白水社 2007
(17) 岸俊男 「紀氏に関する一試考」 『日本古代政治史研究』所収 塙書房 1969


方法
1:基本的方法
科学的方法によって証明されている地理学的資料、考古資料を尊重。 併せて論理学、材料の信頼度判定(EBMの準用)などを用いて検証。   

2:史料批判法の遵守
引用関係がない二つ以上の史料に同一の記述が有り、一致した原因が、偶然の 一致となる可能性が極めて低いと考えられるとき。
史料の記述が、科学的に証明された他の資料(考古資料など)と矛盾しないとき。        

3:統計学的仮説検定の適用
記述統計学のみならず、必要に応じて若干の推計統計学的処理を行い、以下の要領で有意差を示した。
   黒色 p≧0.05 (有意差無し、平均値より多いといえる)
   灰色 p<0.05 (有意差あり、平均値より少ないと言える)
   白色 p<0.01 (有意差あり、平均値より極めて少ないと言える)


結果・考察
 古代社会における神社祭祀をどのように考えるかについては、様々な捉え方が存在する様に思われる。
 祭神に何らかの機能を期待したものとして見る場合には、国家あるいは共同体の鎮護という役割からの分析が要求されるであろうし、あるいは政権側の統治のための一手段として考えねばならない事もあるのではなかろうか。例えば、勝者は敗者が奉祀する神を奪い、自らが奉祀する神の祭祀を強要させたり、被支配者側の祭神に神階を奉授する事によって被支配者層に格付けを行うなど、祭祀制度を利用した様々な政治的対応が認められる。
 また、特定の神祇を奉祀する集団においてはその宗教的性格もしくは属性を表す何らかの指標になるものとも思われる。
この様に、神社祭祀から多くの事が観察できるのだが、以上を踏まえて神階奉授に関する考察を行う。

詳細は、「考察-伯耆国および令制諸国の神階奉授に関する考察」へ



参考資料-1
式内社・郡・郷数、田積、出挙原本

参考資料-2
延喜式巻9・10 神名帳
「和名類聚抄郷名考證」 (吉川弘文堂 1966 池邊彌)
「和名類聚抄郡郷里駅驛名考證」 (吉川弘文堂 1981 池邊彌)

「人口から読む日本の歴史」 (鬼頭宏著 講談社学術文庫 2000年 )
「図説人口で見る日本史」   (鬼頭宏著 PHP研究所 2007年)
歴史人口学で見た日本」  (速水融 文春新書 2001年)

「鳥取県神社誌」  (澤田文精堂 1934)
「新修米子市史」  第一巻 通史編 原始・古代・中世
「新修米子市史」  第六巻 自然編
「新修米子市史」  第七巻 資料編 原始・古代・中世
「鳥取県誌」     第一巻 原始古代 (1972)
「鳥取県の歴史」  (山川出版 1997)

「統計学要論」 (共立出版 1975)
「バイオサイエンスの統計学」 (南江堂 1994)
「医学・公衆衛生学のための統計学入門」 (南江堂 1988)
「図解 確率・統計の仕組みがわかる本」 (技術評論社 2008 長谷川勝也)
「Excelでここまでできる統計解析」 (日本規格協会 2007 今里健一郎 森田浩)

Wikipedia  「近代以前の日本の人口統計」  「歴史人口学」


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伯耆国および令制諸国の神階奉授に関する文献的考察』
 伯耆国の古代史研究は十分な文献的史料が無い事から、考古資料、民俗学的資料等を併せて集学的に検証する事が不可欠になると思われる。
 しかし、特に神社伝承についてはその重要性に反し信頼性で疑問が残る点も否めない。
 以前に筆者は比較的史料の蓄積がなされ始めた平安時代の神社史料、すなわち『延喜式』巻九・巻十に記載されている「神名帳」を頼りに式内社に関する推計統計学的考察を行った(1)
 その中で、官社あるいは式内社の選定においては令制国の面積、人口、郡数、郷数、経済力(農業力)、律令が定めた国力は関与しておらず、何らかの人為的あるいは政治的恣意によって為されているという結論が示された。
 しかし、その人為的・政治的恣意とは何であったのかを解明するには十分な根拠を見い出せていない。
 そこで、式内社選定に先立って行われた神階奉授に関する検討を行うことは、伯耆国の古代史を考える上で何らかの示唆を期待できるものと考え文献的考察を行った。  2013-1-11