核反応・放射性物質・放射線について
東北関東大震災により,甚大な被害を受けられた全ての皆様に,心よりお見舞い申し上げます。 
また被災地において,懸命に救援活動にあたっておられる関係の皆様に感謝と敬意を表します。


物質は全て極めて微細な原子から構成されている。
人間もその例外ではなく、究極的には原子の集合体である。
原子は、陽子数の数によって、各種の元素(水素H、ヘリウムHeなど)を構成する。
原子は必ずしも定常的なものでなく、ほかの原子核や粒子との衝突によって、別の種類の原子核に変わる。
この時、放射性物質や放射線が放出され、自然界および人体に様々な影響を及ぼすことになる。

         原子核変換(放射性崩壊、核反応)→→→放射能を持った放射性物質+放射線

放射能と放射性物質
放射線を出す能力を放射能と呼び、放射能を持つ物質を放射性物質とよぶ。

放射線(ほうしゃせん)とは
一般的には電離性を有する高いエネルギーを持った電磁波や粒子線のことを指す。

A 原子と原子核変換
1:原子の構造
原子は芯になる原子核と、そのまわりを回る電子から構成されている。
さらに原子核は陽子と中性子というほぼ同じ質量を持つ2種類の粒子からできている。

      ---電子e-            (質量数=陽子数+中性子数)
原子---|
      ---陽子P+中性子n      (原子番号=陽子数)

陽子
正の電荷を帯び、質量は1.672×10-27kgで、直径は10-15m。
中性子とともに原子核を構成することから、これらを核子と総称する。

電子
負の電荷を帯び、質量は陽子の1/1836。
電子はとびとびのエネルギー状態を取りながら通常、最もエネルギー準位の低いところから順に原子軌道を占有していく。

中性子
電気的には中性で、質量は1.674×10-27kg であり、同じ核子である陽子よりわずかに大きい。
       

2:原子核変換(Nuclear transmutation)
原子核変換
原子核変換は、原子核崩壊と原子核反応に分類され、原子核反応はさらに原子核融合反応と原子核分裂反応に分類される。
原子核反応により発生するエネルギーは、化石燃料の燃焼などの化学反応により発生するエネルギーに比べて桁違いに大きく、核兵器として利用されるほか、エネルギー資源として主に原子力発電に利用される。
ただし、現在のところ発電に利用されているのは原子核分裂だけであり、原子核融合による発電はまだ実用化されていない。
一方、原子核崩壊により発生する比較的弱いエネルギーは原子力電池や放射線医学などに利用されている。

                     --原子核崩壊または放射性崩壊 (広義の核分裂反応を含む)
                    | 
        原子核変換-- |              --核分裂反応(狭義)
                    |              |
                     --原子核反応--
                                   |
                                   --核融合反応

放射性崩壊
不安定な原子核(放射性同位体)が様々な相互作用によって状態を変化させる現象である。
放射性壊変、放射壊変(ほうしゃかいへん)、原子核崩壊、あるいは、単に崩壊とも呼ばれる。
      アルファ崩壊(α) · 中性子放出(n) · 陽子放出(p) · クラスタ崩壊 · 自発核分裂(SF) · 核分裂反応 ・ 光崩壊
      電子放出(β-)· 電子捕獲(ε) · 陽電子放出(β+)· 二重ベータ崩壊(β-β-) · 二重電子捕獲(εε)
      ガンマ崩壊(γ) · 核異性体転  移(IT) · 内部転換

原子核反応
原子核が、ほかの原子核や粒子との衝突によって、別の種類の原子核に変わること。
原子核に他の粒子、例えば中性子、陽子、α粒子、γ線等が衝突すると原子核に吸収されたり、原子核内の陽子、中性子、その他を弾き飛ばして、原子核を構成している中性子と陽子の個数が変わり、種類の異なる原子核に変換される。
これらの反応を総称して原子核反応という。
原子核反応には、核分裂・核融合がある。
  核分裂反応(狭義)
      
  核融合反応
      熱核融合 衝突核融合スピン偏極核融合ピクノ核融合


B 原子核変換
1:放射性崩壊(radioactive decay)または原子核崩壊
  放射性崩壊とは

不安定な原子核(放射性同位体)が様々な相互作用によって状態を変化させる現象である。
放射性壊変、放射壊変、原子核崩壊(げんしかくほうかい)、あるいは、単に崩壊とも呼ばれる。

放射性崩壊の種類
これらの現象の詳細は、個別の記事を参照のこと。

アルファ崩壊
アルファ粒子(4He2)を放出し、陽子2個・中性子2個を減じた核種に変わる。核分裂反応の1つとして認識されることもある。
         例 : 226Ra→222Rn

ベータ崩壊
質量数を変えることなく、陽子・中性子の変換が行われる反応の総称で、β-崩壊(陰電子崩壊)、β+崩壊(陽電子崩壊)、電子捕獲、二重ベータ崩壊、二重電子捕獲が含まれる。

ガンマ崩壊
それぞれの崩壊を終えた直後の原子核には過剰なエネルギーが残存するため、電磁波(ガンマ線)を放つことにより安定化をしようとする反応である。

中性子放出
放射性崩壊の形式であり、原子が含む超過した中性子を原子核が単純に放出する過程。
  中性子を放出する同位体の例
    ヘリウム5、ベリリウム13
       ただし、ヘリウム5の崩壊はまた、定義上はアルファ崩壊にも分類される。
    カリホルニウム252
      自発核分裂(平均3.8個の中性子を出す)するので、中性子線源や、非破壊検査、その他研究用に使用される。
      カリホルニウム252は原子炉建設後、最初の中性子源として利用される。
      必要量はμg単位にすぎない。

核分裂反応
非常に重く不安定な核種では、その核が質量の小さな原子核に分裂し、巨大なエネルギーを放つとともに、より安定な核種へと変化する。
例えば、235Uに中性子を衝突させると、95Moと139Laに分裂し、2つの中性子を放出し、欠損した質量分のエネルギーが発生する。

自発核分裂
核分裂反応のうち、自由な中性子の照射を受けることなく起きる核分裂を指す。
質量数が非常に大きな同位体に特徴的に見られる放射性崩壊の一種である。
自発核分裂は理論的には質量が100amu程度(ルテニウム付近)を超えるどのような原子核にも起こりうるが、エネルギー的に実際に自発核分裂が可能なのは原子量が約230amu(トリウム付近)以上の原子に限られる。
自発核分裂が最も起こりやすい元素はラザホージウムのような超アクチノイド元素である。
中性子や他の粒子による衝撃を受けることなく分裂が始まる点が通常の核分裂と異なっている。
現象そのものは人為的な核分裂反応と変わらない。
   自発核分裂を起こしやすい物質
        カリホルニウム252、プルトニウム240、ウラン238など


核異性体転移
ITと略される。原子番号と質量数ともに同じで、エネルギー準位が異なるような2つの核種を、核異性体であるという。
例えば、99Tcと99mTcは互いに核異性体である。エネルギー準位が高いほうは記号mを付けて区別するのだが、こちらは準安定状態(メタステーブル)であり、余剰のエネルギーを放出して安定になろうとする。
エネルギー準位が高いほうの核異性体がガンマ線を放出して、より安定な方の核異性体に変化することを、核異性体転移という。
放出される放射線はガンマ線であり、原子核の原子番号と質量数はともに変化しない。
       99mTc → 99Tc + γ (T1/2=6.01h)
一部の核異性体転移では、ガンマ線が軌道電子にエネルギーを与えてはじき出す。
これを内部転換という。電子がはじき出される点でベータ崩壊に似ているが、原子核は変化しておらず、自らの原子はイオン化される。


2:原子核反応
核分裂反応
核分裂反応とは
不安定核(重い原子核や陽子過剰核、中性子過剰核など)が分裂してより軽い元素を二つ以上作る反応のこと。
不安定核は主に次の3つの過程を経て別の原子核に変わる。

   1 電子もしくは陽電子を放出して僅かに軽い核になる。
   2 He核(アルファ粒子)を放出して少し軽い核になる。
   3 He核より重い大きな核(重荷電粒子線)を一つ以上放出してかなり軽い核になる。

   1,2 は一般には原子核崩壊(それぞれベータ崩壊、アルファ崩壊)という。
        この核崩壊を起こす原子核は放射線を出す能力を持つ(放射能)。
   2,3は原子核分裂ということになるが、一般的には 3 の事を指す事が多い。

臨界状態
核分裂反応に伴って発生した中性子が、もし次の核分裂反応を起こさせることができれば、その反応で生じた中性子がその次の原子核分裂を起こさせることも期待できる。
条件を整えて核分裂反応が持続する状態を作り出した場合、核分裂反応が臨界に達した、または臨界状態になったと称する。
臨界に達した核分裂性物質は、何らかの条件変化によって核分裂反応の数が減るか、核分裂性物質そのものが減るなどしない限り核分裂の連鎖反応が維持される。
臨界量は、原子核分裂の連鎖反応が持続する核分裂物質の最少の質量を指す。

核爆発(Nuclear explosion)とは
核分裂反応(または核融合反応)を連続して短時間に起こすことにより、生成される爆発現象のこと。
人類の技術においては、軍事用途のみが実用化されており、核兵器の主要な効果として用いられている。

核分裂性物質
核分裂の結果として生じる大きな2つの破片を核分裂片とよぶ。
それぞれが原子核となって新しい2つの原子ができる。
分裂のしかたは、さまざまであるが、真半分に割れることは少なく、大きさの割合で3:2ぐらいになることが多い。
元素の種類としてはニッケル(原子番号28)からジスプロシウム(66)まで約40種、質量数でいえば66から166までほぼ100種類のものができる。
これらを総称して核分裂生成物(FP)とよぶ。
核分裂生成物は、ほとんどがベータマイナスの放射能をもち、強力なベータ線とガンマ線を放出する。

         原子核変換→→→放射能を持った放射性物質+放射線

核融合
原子核融合とは
軽い核種同士が融合してより重い核種になる反応である。一般には単に核融合と呼ばれることが多い。
原子核同士がある程度接近すると原子核同士が引き合う力(核力)が反発する力(クーロン力)を超え、2つの原子が融合することになる。



C 放射性物質(radioactive material)
1:放射性物質
放射性物質とは

放射線を出す能力を放射能といい、放射能をもっている原子(放射性核種)を含む物質を一般的に放射性物質という。
また、個々の核種を限定しない場合は、放射性核種のことを総称して放射性物質ということもある。
放射性物質、放射線及び放射能の関係は、「電灯」が放射性物質に、電灯から出る「光線」が放射線に、そして電灯の「光を出す能力」と「その強さ(ワット数)」が放射能にあたる。

放射性物質の例
  ウラン、プルトニウム、トリウムのような核燃料物質
  放射性元素もしくは放射性同位体
  中性子を吸収又は核反応を起こして生成された放射化物質

放射性物質と放射能

放射性物質 1グラムあたりの放射能の強さ 半減期
天然の放射性核種 ウラン238 1万2000ベクレル 45億6000万年
カリウム40 26万ベクレル 12億5000万年
ラジウム226 370憶ベクレル 1600年
人工の放射性核種 セシウム137 3兆2000万ベクレル 30年
ヨウ素131 4600兆ベクレル 8日
キセノン133 6900兆ベクレル 5.3日
クリプトン88 290京ベクレル 2.8時間

天然放射性元素(自然界に存在する放射性物質)
自然放射性核種
天然に存在する(人工的な核変換によりつくられたものでない)放射性同位元素のことで、地球誕生時から地殻中に存在する。
  ウラン系列、トリウム系列およびアクチニウム系列に属する元素。
  カリウム、ルビジウム、サマリウム、ルテニウム、レニウムなど。
  宇宙線およびそれとのとの相互作用により生成したトリチウム、炭素14などが。

宇宙線
宇宙空間を飛び交う高エネルギーの放射線。
地球大気内に高エネルギーの宇宙線が入射した場合、空気シャワー現象が生じ、多くの二次粒子が発生する。
寿命の短いものはすぐに崩壊するが、安定な粒子は地上で観測される。 このとき、大気中に入射する宇宙線を一次宇宙線、そこから発生した粒子を二次宇宙線と呼ぶ。
一次宇宙線の大部分は陽子をはじめとする荷電粒子である。
それに対して、二次宇宙線は地上高度では大半がμ粒子である。
空気シャワー中では、原子核の相互作用で生じた中性パイ粒子の崩壊などによってガンマ線が生じる。
このガンマ線から、対生成によって1組の電子・陽電子が生じ、これらの電子対が大気中の原子核によって何度か制動放射を起こすことで、複数のガンマ線を放出する。この過程を繰り返すことで粒子数が増加する。このような現象を電磁カスケードと呼ぶ。
ガンマ線と電子は、空気シャワーの主要な成分であるため、電磁カスケードは空気シャワーを特徴づける主要な現象である。

人工放射性元素(人為的に作られた放射性物質)
核原料物質
濃縮等の製錬によって核燃料物質となる原料。

核分裂生成物(崩壊生成物) 
原子炉で核燃料物質が核分裂して生成された物質。
下記にウラン235の核分裂生成物を示す。
ウラン235の核分裂による主な核分裂生成物
生成物 収率 半減期 特記
セシウム133 6.79% 安定 一部は中性子捕獲により半減期約2年のセシウム134になる
ヨウ素135 6.33% 6.57h 崩壊で生成するキセノン135は原子炉でもっとも主要な毒物質で10-50%が中性子獲得によりキセノン136になり、残りは半減期9.14hでセシウム135になる。
ジルコニウム93 6.30% 1.53My
セシウム137 6.09% 30.17y
テクネチウム99 6.05% 211ky
ストロンチウム90 5.75% 28.9y
ヨウ素131 2.83% 8.02d
プロメチウム147 2.27% 2.62y
サマリウム149 1.09% 安定 主要な毒物質のひとつ
ヨウ素129 0.66% 15.7My

燃料物質によって汚染された物質
原子炉及び設備の鉄骨や水が中性子を吸収して生成された物質。

放射性廃棄物
原子力施設や放射線利用施設などで発生する放射性物質を含む廃棄物。

放射線源
放射線療法などで使用する放射線を生み出す放射性物質をいう。


2:各種の放射性物質
放射性同位体
放射性同位体とは
構造が不安定なため時間とともに放射性崩壊していく核種(原子核)である。
同じ元素で中性子の数が違う核種の関係を同位体と呼ぶ。
同位体は安定なものと不安定なものがあり、不安定なものは時間とともに放射性崩壊して放射線を発する。
ラジオアイソトープ(radioisotope)や放射性核種(radionuclide)、放射性同位元素とも呼ばれる。

放射性同位体の例
三重水素、炭素14、カリウム40、ヨウ素131などがあげられる。

放射性元素
放射性同位体はアルファ崩壊により原子番号と質量数の異なる核種へ、またはベータ崩壊により同質量数で原子番号の異なる核種へと放射性崩壊を起こす。
元素の中には放射性同位体しか持たないものもある。
このような元素を放射性元素と呼ぶ。
放射性元素に該当する元素は、テクネチウム、プロメチウム、およびビスマス(原子番号83)以上の原子番号を持つ全ての元素である。

天然放射性元素と人工放射性元素
自然界に存在する元素を分離することで発見された放射性元素は天然放射性元素と呼ばれる。
一方、粒子加速器や原子炉を利用して核種変換することで発見された放射性元素は人工放射性元素と呼ばれる。
一般に、半減期が地球の年齢より十分に短い核種は、地球誕生から現在までの間に、崩壊しているため自然界には存在しない。ただし、ラドンやポロニウムのように半減期は短い核種でも、ウランやトリウムの崩壊生成物として生まれ続けている核種は、自然界に存在する。
天然放射性元素には、ウラン238やトリウム232などの、半減期が地球の年齢と同等かそれ以上の核種が存在する。
天然に存在する元素としては、ウランの原子番号92が一般に最大とされている。
ウラン235は約7億年、ウラン238は44.6億年と半減期が長く、地球の歴史を持ちこたえて残存したが、原子番号93のネプツニウム以降は半減期の短い核種しかないためである。ゆえに、ネプツニウム以降の人工放射性元素は、超ウラン元素とも呼ばれる。
(ただし、ネプツニウムとプルトニウム(原子番号94)はウラン238の崩壊生成物として、微量ながら自然界にも存在することがわかっている。アメリシウム(原子番号95)以上の原子番号の元素は自然界には存在しない)。

放射性同位体と半減期(Half-life)
半減期とは
放射性核種あるいは素粒子が崩壊して別の核種あるいは素粒子に変わるとき、元の核種あるいは素粒子の半分が崩壊する期間を言う。
これは核種あるいは素粒子の安定度を示す値でもあり、半減期が短ければ短いほど不安定な核種または素粒子ということになる。

半減期の例
放射性物質名称 記号 半減期 主な放射線の種類 天然・人工
炭素-11 11C 20分 γ線 人工
酸素-15 15O 2分 γ線 人工
リン-32 32P 14日 β線 人工
カリウム-40 40K 13億年 β線、γ線 天然
鉄-59 59Fe 45日 β線、γ線 人工
コバルト-60 60Co 5.3年 β線、γ線 人工
ニッケル-63 63Ni 100年 β線 人工
ストロンチウム-90 90Sr 29年 γ線 人工
ヨウ素-131 131I 8日 β線、γ線 人工
セシウム-137 137Cs 30年 β線、γ線 人工
ラジウム-226 226Ra 1600年 α線 天然
ウラン-235 235U 7億年 α線、γ線 天然
ウラン-238 238U 45億年 α線 天然
プルトニウム-239 239Pu 2万4千年 α線 人工

各種の放射性同位体
ウラン-235(U)
天然に3種類の同位体が存在し、いずれも長い半減期(数億年~数十億年)を持つ。
地球上で最も多く存在するのはウラン238(存在比 99.275 %)であるが、原子力発電の燃料に使われるのはウラン235(同 0.72 %)である。
ウラン235は、唯一天然に産出する核分裂核種として、原子力利用において極めて重要である。
ウラン235は核分裂の連鎖反応をおこす。
ウラ235の原子核は中性子を吸収すると2つに分裂する。
ウラ235の核分裂反応によって発生する高速中性子は、エネルギーを失って(減速されて)熱中性子になると他のウラン235に良く吸収されて、そのウラン235原子核を85%の確率で核分裂させる。
分裂したウラン235原子核からは、平均2.4個の高速中性子と、もっぱらヨウ139イットリウム95からなる核分裂生成物、および202MeV(百万電子ボルト)のエネルギーが発生する。
もし十分なウラン235が一定空間内に集積されれば核分裂に伴なって発生する中性子が次々と周囲のウラン235原子核を核分裂させてゆく。これを核分裂の連鎖反応と呼ぶ。
また、この際に2個ないし3個の中性子を出し、それによってさらに反応が続く。

ラジウム(Ra)
原子番号88の元素。アルカリ土類金属の一つ。
安定同位体は存在しない。天然には4種類の同位体が存在。
白色の金属で、比重は、およそ5~6、融点は700℃、沸点は1140℃。
反応性は強く、水と激しく反応し、酸に易溶。
空気中で簡単に酸化され暗所で青白く光る。
ラジウムがアルファ崩壊してラドンになる。

ラドン(222Rn)
ラドンは自然起源の無色無臭の気体で希ガスの中で最も重い元素である。
安定同位体は存在せず、すべて放射性同位体である。
融点は-71 °C、沸点は-61.8 °C。常温では気体として存在。
ラドンはラジウムを親核種として生まれて,半減期3.8日で,娘核種ポニウムに崩壊する。
ラドンは重い気体で、私たちは常に微量のラドンを吸いこんで肺に放射線を浴びている。

トロン(220Rn)
トリウムの崩壊生成物であり220Rnである。55.6秒の半減期でアルファ崩壊する。

ヨウ素-131
ヨウ素131は、ウラン235が核分裂する際に 2.878% の確率で生成される娘核種として存在する。
半減期が短いため自然界や冷却された使用済み核燃料中には検出限界以下しか存在しえず、ヨウ素131の検知は核実験や原子炉事故を意味する
食品中のヨウ素はほとんどが甲状腺に蓄積される。
これは甲状腺が機能維持のためにヨウ素を必要とするためである。
ヨウ素131が放射性降下物として環境中に高濃度で存在する場合、摂取する食品を経由して甲状腺に蓄積される可能性が高まり、これが崩壊することで甲状腺にダメージを与える。
高濃度のヨウ素131を取り込んだ場合の危険性は、主に放射線がもたらす遅発性の甲状腺ガンであるが、良性の腫瘍や甲状腺肥大の可能性も指摘されている。
高線量の放射線は時に低線量のものよりも危険性が少ない。

プルトニウム-239(Pu)
原子炉において、ウラン238が中性子を捕獲してウラン239となり、それがベータ崩壊してネプツニウム239になり、更にそれがベータ崩壊してプルトニウム239ができる。
プルトニウムの毒性には、放射線の毒性と化学的な毒性が考えられる。
放射線の毒性は、プルトニウムが放出するアルファ線によるもので、このアルファ線は人体の中を極めて短い距離しか透過しない(組織の中で約40ミクロン、骨では約10ミクロン)。
この短い距離の間に、アルファ線は細胞や組織、器官に全部のエネルギーを与え、それらの機能を損なわさせる。
プルトニウム1g当たりの放射能の強さは、同じようにアルファ線を放出するウランに比べてかなり高くなるので、放射線の毒性も強くなる。

セシウム-137
セシウムも678℃で気体になるため、原発事故で放出されやすい。
セシウム137は、半減期が30年と長い。
またセシウムは土壌粒子と結合しやすいため長い間地表から流されない
このため、短寿命の放射性核種やヨウ素131が消滅したあとにも残る。
地面から放射線を放ち続け、農作物にも取り込まれて、長期汚染の原因になる。
旧ソ連では、セシウム137が1平方メートルあたり150万ベクレル以上(1平方メートルあたり0,004グラム以上)の地域を強制立退き地域にした。
高濃度汚染地域は、チェルノブイリ原発から約250kmの範囲に点在している。
過去には、1960年代末までの大気圏核実験によって1憶8500万京ベクレルという、膨大な核分裂生成物がばらまかれ、地球全体を汚染した。
核実験によるセシウム137は、現在も海水・地表・大気中に残っている。

炭素-14
宇宙空間には宇宙線という、星の爆発や太陽の活動により生じた放射線が満ちている。
宇宙線が地球大気上層で空気中の窒素原子と衝突して炭素14が生じる。
炭素14の半減期は5730年と短いが大気上層で常に生み出されている。
全炭素のうち炭素14の割合はわずかに1兆分の1。
しかし炭素は人体の主成分なので、人体中には炭素14が約1500ベクレル含まれている。

カリウム-40
カリウム40も代表的な天然放射性核種。全カリウムの約0.01%がカリウム40。
カリウムは生物にとって必要不可欠な元素で、カリは窒素・リン酸と並ぶ肥料である。
放射性のカリウム40も、安定なカリウム39やカリウム41も、化学的性質はまったく変わらず、生物は区別できない。
人間の体にはカリウム40が約3700ベクレル含まれている。

補足
ホウ酸と核反応
ホウ素の同位体のうち10Bは非常に大きな中性子吸収断面積を持つ。
この特性を生かし、原子炉内において中性子の吸収のため制御棒に使用される。
化合物であるホウ酸は一次冷却水に溶かし込んで加圧水型原子炉の余剰反応度制御に使われる
微量のホウ素添加を行った金属による放射性物質運搬容器も使用される。

放射能泉
掲示用泉質名に基づく温泉の泉質の分類の一種である。
微量のラジウム、ラドンおよびアスタチンから水銀までの原子核崩壊によって生じる放射性同位体が含まれるのが特徴。
放射能は人体への悪影響は微量であるためほとんどなく、ホルミシス効果による免疫細胞の活性化による効能があるとされる。
ラドン222の濃度が74ベクレル/リットル以上が「ラドン温泉」であり、ラジウムが1億分の1グラム/リットル以上含まれるのが「ラジウム温泉」である。

三朝温泉
鳥取県東伯郡三朝町にある温泉。
伝説によれば1163年に発見されたという歴史的な温泉で、源頼朝の家臣、大久保左馬之祐(さまのすけ)が源氏の再興を祈願し、三徳山三佛寺に赴いた折に命を救った白狼が夢枕に立って、楠の老木から湯が湧き出ていることを教えたといわれる。
ラジウムおよびラジウムがアルファ崩壊したラドンが含まれており、世界でも有数の放射能泉である。
また一部の旅館には高濃度のトロンを含む温泉もある。源泉中のラドン量について683.3マッヘ(9225Bq)の記録がある。
1マッヘのラドンの放射能は約13.5ベクレル。


D 放射線(ionizing radiation、radioactive ray、radiation)
1:放射線の分類
粒子線(高速粒子線)
 イオン化された原子や分子などの粒子によるビームである。
 つまり、粒子が束状になって進んでいく状態である。
    アルファ線(α線)
    ベータ線(β線)
    陽子線
    重荷電粒子線
    電子線(原子核崩壊によらず加速器で電子を加速するものを指す)
    中性子線
    宇宙線

電磁放射線
放射線のうち電磁波であるものをいい、一般に紫外線よりも波長の短いエックス線(X線)、ガンマ線(γ線)をさす。
エックス線とガンマ線との違いは発生の仕方によって分けられる。
ガンマ線は原子核内のエネルギー準位の遷移、エックス線は軌道原子の遷移を起源とするものである。
波長だけに注目しエックス線よりも波長の短いもの(およそ10pm)をガンマ線とすることもある。
    ガンマ線(γ線)・・・・原子核から出るのがγ線
    エックス線(X線)・・・ 軌道電子から出るのが X線 

放射線のうち、アルファ線とベータ線に関しては特別な技術を用いなくても容易に遮蔽することができるが、ガンマ線、X線、中性子線は物質を透過する能力が高いため、できるだけ生態系に影響を与えない配慮が求められている。
その具体的な方法は、放射線が十分に減衰するだけの間隔と遮蔽を取ることである。


2:粒子線
アルファ線(α線)
α線とは
アルファ粒子の流れである。
アルファ粒子は、高い運動エネルギーを持つヘリウム4の原子核である。陽子2個と中性子2個からなる。
He2+(より厳密には 4He2+)と表される。

α線の発生とα崩壊
ある原子核がアルファ粒子(陽子2つ、中性子2つの、ヘリウム4の原子核)を放出し、原子番号と中性子数が2減る(すなわち、質量数が4減る)ことをいう。
アルファ崩壊は一つの原子が二つの原子へと分かれる核分裂反応ととらえることもできる。

α線の性質
電離作用が強いので透過力は小さく、紙や数cmの空気層で止められる
しかし、その電離作用の強さのため、アルファ線を出す物質を体内に取り込んだ場合の内部被曝には十分注意しなければならない。

ベータ線(β線)
β線とは
ベータ粒子の流れを、β線と呼ぶ。実体は電子または陽電子である。
普通「ベータ線」という場合は、負電荷を持った電子の流れを指す。

β線の発生とβ崩壊
 β崩壊
  中性子が電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出して陽子になる現象。
  単にベータ崩壊といった場合これを指す。
  一般的に、安定同位体よりも中性子の多い核種でβ崩壊が発生する。
 β+崩壊
  陽子が陽電子(ベータ粒子)と電子ニュートリノを放出して中性子になる現象。
  陽電子崩壊とも呼ぶ。
  一般的に、安定同位体よりも中性子の少ない核種でβ+崩壊が発生する。

β線の性質
透過力は弱く、通常は数mm のアルミ板や 1cm 程度のプラスチック板で十分遮蔽できる
ただし、ベータ粒子が遮蔽物によって減速する際には制動放射によりX線が発生するため、その発生したX線についての遮蔽も必要となる。

中性子線
中性子線とは
中性子は、電荷がゼロ(中性)の原子より小さな粒子。
中性子の粒子線のことを中性子線という。

中性子線の発生
核分裂によって自然発生する。

中性子線の性質
中性子線は、水やパラフィン、厚いコンクリートで止めることができる
中性子線は、ガンマ線のように透過力が強いので、人体の外部から中性子線を受けるとガンマ線の場合と同様に組織や臓器に影響を与える。
吸収された線量が同じであれば、ガンマ線よりも中性子線の方が人体に与える影響は大きい。



3:電磁放射線
ガンマ線(γ線)
γ線とは
α・β崩壊にともなって原子核から放出される放射線。
実体は、波長がおよそ10pm よりも短い電磁波である。

γ線の発生とα崩壊
放射性核種が崩壊して質量や陽子・中性子の比率が変わっても、その原子核には過剰なエネルギーが残存している場合がある。
このとき、残存しているエネルギーをガンマ線として放出することで原子核は安定に向かう。
この現象をガンマ崩壊と呼ぶ。

日本海側の冬期において、雷雲から10 MeV(1×10-9 mSv)のガンマ線を40秒間観測し、雷雲が粒子加速器の働きをしていることを世界で初めて突き止めた。
尚、雷雲からのガンマ線量は1回の胸部X線で浴びる放射線量の2億分の1程度と計算されている。

γ線の性質
アルファ粒子・ベータ粒子と比べると透過能力は高いが、電離作用は弱く、放射線荷重係数が小さい。
ガンマ線の遮蔽には、比重の重い物質(鉛、鉄、コンクリートなど)が使われる。
一般によく利用される鉛(11.3g/cm3)では、10cmの厚さで約1/100~1/1000に減衰される。(コバルト60のガンマ線の場合)
ガンマ線は飛程が長い上、電荷を持たないので電磁気力を使って方向を変えられないため、ガンマ線からの防護は他の放射線と比較して難しい。
また、ガンマ線の持つ電離作用により、DNAを傷つけることによる発がん作用などがある。
全身被曝の致死線量は6グレイ前後である。


エックス線(X線)
X線とは
波長が1pm - 10nm程度、エネルギーで0.1~100keV程度の電磁波のこと。
波長のとりうる領域(エネルギーのとりうる領域)がガンマ線のそれと一部重なっている。
これは、X線とガンマ線との区別が波長ではなく発生機構によるためであり、波長からX線かガンマ線かを割り出すことはできない。
軌道電子の遷移を起源とするものをX線、原子核内のエネルギー準位の遷移を起源とするものをガンマ線と呼ぶ。

X線の発生
X線管の陰極から放出された熱電子が陰極・陽極間の電位差により加速・収束されて陽極(金属)に衝突するとX線が発生する。
即ち、電子が金属中の原子にぶつかるために急ブレーキが掛かり、その時に電子が持っていたエネルギーが金属中で消費される。そのエネルギーの大半は熱になってしまうが、ごく一部(数%以下)は電磁波として外部に放出され、X線となる。
管電圧が高い程、電子の速度は高くなり陽極に電子が衝突した際のエネルギーも高くなる。

X線の種類-1
  連続X線
     原子核のクーロン場によって電子の軌道がまげられ、その時に制動がかかり、X線を放射する。
     このX線は連続波長分布を持つため連続X線と呼ばれる。(白色X線)
  特性X線
     特性X線は、原子の内殻電子の移動(遷移)によって生じるものである。
     内殻電子は物質(金属)によって軌道(エネルギー準位)が決まっているので、連続X線とは異なる。
     そのため、物質に特有のエネルギー(波長)をもったX線が発生する。

X線の種類-2
  超軟X線 (Ultrasoft X-ray)
     約数10eVのエネルギーが非常に低く紫外線に近いX線
  軟X線 (Soft X-ray)
     約0.1 - 2keVのエネルギーが低くて透過性の弱いX線
  X線 (X-ray)
     約2 - 20keVの典型的なX線 (一部を軟X線に入れたり硬X線に入れる場合もある)
  硬X線 (Hard X-ray)
     約20 - 100keVのエネルギーが高くて透過性の強いX線。
     波としての性質より粒子としての性質を強く示すようになる。

X線の性質
γ線と同様にX線は透過力が高いが、やはり遮蔽することができる。
鉛や金といった密度の高い物質のほうが効果的に遮蔽することができる。
コンクリートならば厚さ30cmごとに、鉛板ならば厚さ5cmごとに線量を10分の1にまで減らす。


E 自然放射線と人為的に造られた放射線
1:自然放射線
自然放射線とは
自然放射線
自然界に存在する放射線のことである。
地球上の生物は、岩盤、宇宙線、海水、食物からの自然放射線を受けている


日本における年間平均値(1.4ミリシーベルト)
宇宙線から年間ほぼ300マイクロシーベルト、地殻、建材などからの自然放射性核種((カリウム40ほか)から年間300マイクロシーベルト前後、自然から年間で600マイクロシーベルトの外部被曝を受けている。
そして体内に存在している自然放射性核種(カリウム40、炭素14)から年間ほぼ250マイクロシーベルトの内部被曝を受けている。これらに加え、空気中に含まれているラドンから年間約400マイクロシーベルトの被曝を受けている。
自然から合計年間1000-1500マイクロシーベルト(1-1.5ミリシーベルト)前後の被曝を受けていることになる。


世界平均年間(2.4ミリシーベルト)
宇宙から 0.39ミリシーベルト
大地から 0.48ミリシーベルト
食物から 0.29ミリシーベルト
大気中のラドンなど 1.26ミリシーベルト
合計 2.42ミリシーベルト

詳細は「放射線被曝」へ

生活環境の放射線
宇宙からの放射線
年間2.5ミリシーベルトや0.39ミリシーベルトといったレベルであり、高度が高くなると宇宙からの放射線は空気という遮蔽物が減るために、1,500mごとに約2倍になる。
国際線のジェット機では国内線より長時間高高度を飛行するために比較的強く放射を受ける。
通常の飛行高度は1万m程度なので、これらの値から計算してみれば、地上の約100-150倍もの放射線量に被曝することになる。

大地および居住空間からの放射線
大地から受ける自然放射線の量は場所によって変わる。
居住空間における一般的な放射線源としてはラドンをあげることができるが、まれに建築資材に放射性物質が含まれている場合もある。
また、コンクリートや骨材自身が天然の放射性同位元素を比較的多く含むため、木造建築より建物から発生する放射線の量は多くなる。花崗岩の敷石の道路の両側に立派なビルディングの立ち並ぶ銀座通りは、海の上に比べてガンマ線の量が4倍も多くなっていといわれている。
これは、海上では大地からの放射線が海水によって遮られ、また海水自体は土に比べあまり放射性同位元素を含んでいないことによる。

飲食物
人が日ごろ口にする水や食物にも極ごく微弱な放射性物質がわずかながら含まれているために、常に体内被曝しているといえる。
この被曝量は年間0.29ミリシーベルト程度とされている。
この場合の放射性物質は1つは宇宙線によって生成された空中の三重水素(トリチウム)や炭素14などであり、地殻由来のカリウム40、ルビジウム87、ポロニウム210、鉛210が、ウランやトリウム、ラジウムと共に食物を経由して体内に取り込まれてごく微弱な体内被曝の元となっている。
主な内部被曝源としてはカリウム40や炭素14のような天然に存在する放射性同位体がある。
体重60kgの人体で、カリウム40で4000ベクレル、炭素14で2500ベクレル、の天然の放射能があると言われている

大気中の放射線
空気中からも年間1.26ミリシーベルトの被曝がある。
地球内部から漏れ出て自然に存在するラドンなどの気体がその微弱な放射源である。
空気中からのラドンなどの放射性物質の摂取は、呼吸器系に影響を及ぼし、肺癌などのリスク要因になりうるとして、世界保健機関では屋内ラドン濃度が100ベクレル/m3未満に低減するよう注意を呼びかけている。

場所によって違う自然放射線の量
日本国内
大地から受ける自然放射線の量は場所によって変わる。
日本全国を県単位でみても、最も高い岐阜県は1.19ミリシーベルト、神奈川県の0.81ミリシーベルトと、1.5倍ほどの差がある。
これは、大地に含まれている鉱物の種類が異なるためであり、国内ではほぼ西高東低になっている。

海外
ブラジルのガスパリは10ミリシーベルトと、日本の10倍近い値を示す。
これは土壌中のモナザイトという鉱物のためといわれている。

高度による違い
地上から高いところほど、宇宙からくる放射線(宇宙線)の量が多くなる。
1万メートル以上の高度では、地上(海面)の約150倍の宇宙線が降り注いでいることによる。

参照 : 「航空機搭乗と放射線」


2:原子力発電所由来の放射線
通常時の原子力発電所付近の放射線量
原子力発電所の近くは、核事故がなくても微量な核物質が常に漏れ出しており、原子力発電所の敷地境界での許容値は年間0.05ミリシーベルトの上昇である。
この値は許容限界であって、実際は0.001ミリシーベルト以下と低線量であるため、住民の安全は確保されているとされる。

原子力発電所事故に伴う放射線量
国際原子力事象評価尺度(INES、International Nuclear Event Scale)とは
原子力事故・故障の評価の尺度。国際原子力機関 (IAEA) と経済協力開発機構原子力機関 (OECD/NEA) が策定した。
1990年より試験的に運用され、1992年に各国の正式採用を勧告した。同年に日本でも採用された。

原発事故での放射線放出量
チェルノブイリ原発事故・・・総放出量520万テラベクレル
東電福島第1原発事故・・・総放出量85万テラベクレル(2011/6/6時点)

レベル 影響の範囲(最も高いレベルが当該事象の評価結果となる) 参考事例
基準1
事業所外への影響
基準2
事業所内への影響
基準3
深層防護の劣化
7
深刻な事故
放射性物質の重大な外部放出
ヨウ素131等価で数万テラベクレル以上の放射性物質の外部放出
原子炉や放射性物質障壁が壊滅、再建不能 チェルノブイリ原子力発電所事故
(1986年)520万テラベクレル
福島第一原子力発電所事故
(暫定2011年)85万テラベクレル
6
大事故
放射性物質のかなりの外部放出
ヨウ素131等価で数千から数万テラベクレル相当の放射性物質の外部放出
原子炉や放射性物質障壁に致命的な被害 ウラル核惨事(キシュテム事故)
(1957年)
5
事業所外へリスクを伴う事故
放射性物質の限定的な外部放出:ヨウ素131等価で数百から数千テラベクレル相当の放射性物質の外部放出 原子炉の炉心や放射性物質障壁の重大な損傷 チョーク・リバー研究所原子炉爆発事故(1952年)
ウィンズケール火災事故(1957年)
スリーマイル島原子力発電所事故(1979年)
ゴイアニア被曝事故(1987年)
4
事業所外への大きなリスクを伴わない事故
放射性物質の少量の外部放出:法定限度を超える程度(数ミリシーベルト)の公衆被曝 原子炉の炉心や放射性物質障壁のかなりの損傷/従業員の致死量被曝 フォールズSL-1炉爆発事故
(1961年)
東海村JCO臨界事故(1999年)
フルーリュス放射性物質研究所ガス漏れ事故(2008年)等
3
重大な異常事象
放射性物質の極めて少量の外部放出:法定限度の10分の1を超える程度(10分の数ミリシーベルト)の公衆被曝 重大な放射性物質による汚染/急性の放射線障害を生じる従業員被曝 深層防護の喪失 旧動燃東海事業所・アスファルト固化処理施設火災爆発事故(1997年)等
2
異常事象
かなりの放射性物質による汚染/法定の年間線量当量限度を超える従業員被曝 深層防護のかなりの劣化 関西電力美浜発電所2号機・蒸気発生器伝熱管損傷(1991年)等
1
逸脱
運転制限範囲からの逸脱 「もんじゅ」ナトリウム漏洩(
1995年)
関西電力美浜発電所3号機・2次冷却水配管蒸気噴出(2004年)等
0
尺度以下
安全上重要ではない事象
評価対象外 安全性に関係しない事象


医療による放射線量
  
  詳細は別記、「放射線と医療被曝」



参考資料
「知っておきたい放射能の基礎知識」 (株 ソフトバンククリエイティブ 2011 斉藤勝裕)
「放射線の影響が分かる本」 (財団法人放射線影響協会)
「核災害に対する放射線防護」 (医療科学社 2005 高田純)
「原発事故緊急対策マニュアル」 (合同出版 2011)

「新編教養物理学」 (学術図書出版社 1985 原島鮮 )
「チャート式シリーズ 新物理II」 (数研出版 1978 力武常次)

「X 線診断による臓器・組織線量,実効線量および集団実効線量」 
  (RADIOISOTOPES.1996;45.761-773 丸山隆司,岩井一男,西澤かな枝,他)

原子力百科辞典 ATOMICA
Wikipedia 「放射線」