神社について
神社の起源
古社の場合
①自然物の崇拝
磐座(いはくら;いわくら)や神の住む場所である禁足地(俗に神体山)などで行われた祭事の際に臨時に建てた神籬(ひもろぎ)などの祭壇であり、元々は常設のものではなかった。
②墳墓の崇拝
墳丘墓、古墳の近く、あるいはその上に祭壇を設置した場合。
神社の境内から鏡、玉などが発掘されるのがその例。

新しい神社の場合
神社を必要とした場合、たとえば村が発生した時などの場合には、適当な場所に分霊や氏神を祀ることで神社を造営した。


延喜式神名帳について
延喜式50巻は905年に編纂が開始された律令や格の細則。
神名帳は巻9、10にあり、天皇の名で行う祈年祭である豊作祈願の行事の際、供物を下賜する3132座の神々の一覧が記載してある。
   詳細は、「延喜式」



神社の基本構造等
鎮守の杜(森)
神社に付随して参道や拝所を囲むように設定・維持されている森林。
古神道における神奈備(かむなび・かんなび)という神が鎮座する森のことで神代・上代(かみしろ)ともいう。


鳥居
鳥居とは
神域と人間が住む俗界を区画するもの(結界)であり、神域への入口を示すもの。
一種の「門」である。
屋根のない門という意味で「於上不葺御門(うえふかずのみかど)」ともいった。
8世紀ごろに現在の形が確立している。

鳥居の起源
鳥居の起源については諸説あるが、確かなことは分かっていない。
①天照大御神(あまてらすおおみかみ)を天岩戸から誘い出すために鳴かせた「常世の長鳴鳥」(鶏)に因み、神前に鶏の止まり木を置いたことが起源であるとする説


拝殿
拝殿の特徴
本殿との違いは、神前(本殿の前にある拝殿)で神に参拝するための物である事。
祭祀・拝礼を行なうための社殿で、祭祀の時に神職などが着座するところでもあり、吹き抜けとされる場合が多い。
通常、神社を訪れた際に見るのはこの拝殿で、一般の参拝は拝殿の手前で拍手を打って行なうが、祈祷などのため拝殿に昇る(昇殿)こともある。
一般に本殿よりも大きく建てられ、床を張るのが一般的であるが、中央が土間となっており、通り抜けることができる「割拝殿」(国宝となっている桜井神社のものが著名)もある。
舞殿、神楽殿、社務所などを兼ねていることもある。
神社によっては拝殿を持たないところ(春日大社・伊勢神宮など)や、2つ持つところ(伏見稲荷大社・明治神宮など)もある。2つある場合は、手前を外拝殿(げはいでん)と呼び、奥のものを内拝殿(ないはいでん)と呼ぶ。
鈴(鈴の緒)や鰐口がある場合もある。

拝殿の起源
拝殿の成立は本殿よりも後である。
本殿は、その起源を祭壇に求められるように、祭祀の対象であって、祭祀を行なう場ではなかった。
拝殿が登場する以前、神社の祭祀は本殿の正面の露天の祭場で行なわれていた。
神職らは祭場の左右に着座し、そこから中央の祭場に赴いて祭儀を行なった。
祭場が屋内になると、中心の祭場が幣殿となり、神職着座の場が回廊となった。
回廊の入口には楼門が建てられた。
このように祭祀の形態にあわせて、楼門と回廊と幣殿が建てられたが、これらを持つに至らない小規模な神社は、やがてその機能を圧縮して、ひとつの社殿にその機能を備えさせることにした。
これが拝殿である。
楼門・回廊・幣殿の機能を圧縮する形で拝殿が成立したのである。


本殿
本殿の特徴
神霊を宿した神体を安置する社殿のことで、神殿(しんでん)ともいう。
本殿は人が内部に入ることを前提としていないため、拝殿より小さいことが多い。
古くは1宇の本殿に1柱の神が祀られたが、現在では1宇の本殿に複数の神が祀られることも多い。
内部には神体(鏡など)がおさめられる。内陣と外陣に分かれている場合は内陣に神体が納められ、外陣は献饌・奉幣の場として使われる。

本殿の起源

古くは神社には社殿がなかった。神は社殿にいるのではなく、山や森などにいると考えられ、それも特定の一箇所に常在するとは考えられていなかった。
しかし、神は特殊な形をした特定の岩や木に来臨すると考えられ、神への祭祀は、そこで行なわれた。
この祭場が磐境(いわさか)・磐座(いわくら)などと呼ばれるものである。
やがて、祭場には仮設の祭壇が設けられるようになった。
いわゆる「神籬」(ひもろぎ)とよばれるものがこれに当たると考えられている。
神籬は祭祀の際に祭壇の上に設置されて、祭祀が行なわれた。
やがて、この神籬が発展して本格的な建築物をなすようになり、社殿になったと考えられる。


幣殿(へいでん)
祭儀を行い、幣帛を奉る社殿である。独立していることもあるが、拝殿と一体になっていることが多い
幣殿を持たない神社もある。


神社の社格等について
社格、神階とは
社格(しゃかく)
神社の格式。
祭政一致に基づき、朝廷などにより定められる。

神階とは
神道の神に授けられた位階である。神位(しんい)とも言う。
その仕組みは人臣に対する位階と同じで、位階・勲位(勲等)・品位の三種がある。
人に対する位階(いかい)は少初位下から正一位までの30階であるが、神に対するものは正六位から正一位までの15階のみである。
神に対する位階は、単に栄誉として与えられたもののようであり、神階よりも神社の社格の方が重視されていた。
神階の授与は、神祇官や諸国からの申請に基づいて公卿の会議で議論され、天皇への奏聞を経て決定された。
しかし、平安時代になると、神祇官や国司が勝手に神階の授与するということもたびたび行われるようになった。


上古社格制度
天津社
  天津神を祀る神社。
国津社
  国津神を祀る神社。


古代・中世社格制度
官社
国家の保護を受けた神社で、通常は、朝廷より祈年祭班幣を受ける神社のことを言う。
この制度の始まりは明らかではないが、大宝元年(701)の大宝律令によって官社制度が規定された。
古代において、どの神社が官社であったのかは断片的にしか明らかではないが、律令時代末期の法令『延喜式』(延長5年(927))が現存しており、ここに官社リストが掲載されている。

延喜式による社格制度
延喜式神名帳に記載されている神社を式内社(しきないしゃ)といい、延喜式の時代に明らかに存在していても延喜式神名帳に記載されていない神社を式外社(しきげしゃ)という。
式内社は祈年祭奉幣を受けるべき神社であり、2861社3132座が記載されている。

式内社
これらは当時朝廷から重視された神社であることを示している。
官幣社は、神祇官より奉幣を受ける神社.。
国幣社は、国司より奉幣を受ける神社である。
それぞれに大・小の格が定められている。
官幣社が573社737座、国幣社が2288社2395座。
当初は全て神祇官から直接奉幣を受けていたが、遠国の神社についてはそこへ行くまでに時間がかかることから、国司が代理で行うようになり、官幣社・国幣社の別ができた。
ただし、遠国であっても重要な神社は官幣社となっていた。
  官幣大社-198社304座
  国幣大社-155社188座
  官幣小社-375社433座
  国幣小社-2133社2207座

官幣大社は畿内に集中しているが、その他の地方にも分布している。
官幣小社は全て畿内に分布。
国幣大社・国幣小社は全て畿外にある。
なお、近代社格制度にも同じ名称の社格があるが、式内社の社格とはその示す意味が異なる。
また、近代社格制度の社格は、延喜式における社格とは関係なく、制定時の重要度や社勢に応じて定められている。

式内社と奉幣
式内社の中には、祈年祭以外の祭にも幣帛に預かる神社があり、社格とともに記されている。
  名神 -- 特に霊験著しい「名神」を祀る、臨時祭の名神祭が行われる神社。
        全てが大社であることから名神大社(名神大)という。
  月次 -- 月次祭(6月と12月の年2回行われる祭)に幣帛を受ける神社。
  相嘗 -- 相嘗祭(新嘗祭に先立ち新穀を供える祭)が行われる神社。
  新嘗 -- 新嘗祭(毎年11月に行われる一年の収穫を祝う祭)に幣帛を受ける神社。

一宮(いちのみや)
一宮は国で一番有力な神社。
国司が任国に赴任したときに神拝といって任国内の神社を巡拝しなければならなかった。
その中でもっとも有力な神社を一宮と呼ぶようになり、一番初めに参拝し、国によっては二宮、三宮も存在した。
明確な規定はなく神社の盛衰によるため時代によって異なる。平安時代後期から、地方より始まり、やがて畿内でも定められた。

二十二社(にじゅうにしゃ)
神社の社格の一つ。
国家の重大事、天変地異の時などに朝廷から特別の奉幣を受けた。
後朱雀天皇御代の長暦3年(1039年)に22社目の日吉社が加わり、白河天皇御代の永保元年(1081年)に制度としての二十二社が確立したとされる。
主に畿内の神社から選ばれた。

明神大社(明神大)
名神(みょうじん)は神々の中で特に古来より霊験が著しいとされる神に対する称号。
とりわけ農業の保護が期待されていたことが伺える。
「延喜式神名帳」には226社313座が記されている。(官弊大社+国弊大社=353社)


近代社格制度
明治維新以降、律令制下の延喜式による制度にならって新たに作られた社格の制度。

  別格 (すべての神社の上に位置する)
    伊勢神宮

  官国幣社(官社)
    官幣大社>国幣大社>官幣中社>国幣中社>官幣小社>国幣小社>別格官幣社

  諸社(民社)
    府社=県社=藩社>郷社>村社


現代の制度
現代の社格制度
昭和21年(1946年)の神社の国家管理の廃止に伴い公的な社格の制度(近代社格制度)が廃止されたため、それに代わるものとして昭和23年(1948年)に定められた。
神社本庁では、神社本庁が包括している有力神社の一部を別表神社として定めている。

別表神社
社格制度廃止後は、全ての神社は対等の立場であるとされた(伊勢神宮を除く)。
しかし、旧の官国幣社や一部の規模の大きな神社については、神職の進退等に関して一般神社と同じ扱いをすると不都合があることから、「役職員進退に関する規程」において特別な扱いをすることと定めている。
その対象となる神社が同規程の別表に記載されていることから、「別表に掲げる神社」(別表神社)と呼ばれる。

別表神社の扱い方
別表神社は、人事の面で以下のような特別の扱いがされる。

  一定以上の基準に達すれば宮司の下に権宮司を置くことが認められる
  宮司・権宮司は明階以上の階位を有する者でなければ任用されない(一般神社では権正階以上)
  禰宜は正階以上の階位を有する者でなければ任用されない(一般神社では直階以上)
  権禰宜は権正階以上の階位を有する者でなければ任用されない(一般神社では直階以上)
  宮司・権宮司の在任中の身分は特級、一級・二級上以外の者は二級とする
  宮司・権宮司の任免は各都道府県の神社庁長の委任事項としない(神社本庁統理の直接任免とする。)

別表神社の選定基準
当初の別表神社は旧官国幣社のみであったが、昭和26年(1951年)に「別表に掲げる神社選定に関する件」という通達が出され、官国幣社以外で新たに別表神社に加える神社の選定基準が示された。
この規定により、旧府県社・内務大臣指定護国神社を中心に別表神社の数は次第に増加し、2006年現在で353社となっている。
逆に、神社本庁との被包括関係を解消し、別表神社でなくなる神社もある。

  由緒
  社殿・境内地などの神社に関する施設の状況
  常勤の神職の数
  最近3年間の経済状況
  神社の活動状況
  氏子崇敬者の数および分布状況

山陰の別表神社
鳥取県 
神社名 鎮座地 式内 近代 その他の社格 加列年
名和神社 鳥取県西伯郡大山町 別官 1948年
宇倍神社 鳥取県鳥取市 名神 国中 因幡国一宮 1948年
大神山神社 鳥取県米子市 国小 伯耆国二宮 1948年
倭文神社 鳥取県東伯郡湯梨浜町 名神 国小 伯耆国一宮 1948年

島根県
神社名 鎮座地 式内 近代 その他の社格 加列年
出雲大社 島根県出雲市 名神 官大 出雲国一宮勅祭社 1948年
熊野大社 島根県松江市 名神 国大 出雲国一宮 1948年
美保神社 島根県松江市 国中 1948年
水若酢神社 島根県隠岐郡隠岐島町 名神 国中 隠岐国一宮 1948年
日御碕神社 島根県出雲市 国小 1948年
物部神社 島根県大田市 小社 国小 石見国一宮 1948年
須佐神社 島根県出雲市 国小 1948年
佐太神社 島根県松江市 国小 出雲国二宮 1948年
平濱八幡宮 島根県松江市 県社
八重垣神社 島根県松江市 県社 1981年
太皷谷稲成神社 島根県鹿足郡津和野町 郷社
松江護國神社 島根県松江市 護国
濱田護國神社 島根県浜田市 護国


本社・摂社・末社
摂末社とは
神社本社とは別に、その神社の管理に属し、その境内または神社の附近の境外にある小規模な神社のことで、摂社(せっしゃ)と末社(まっしゃ)と併せた呼称である。
枝宮(えだみや)・枝社(えだやしろ)ともいう。
格式は本社・摂社・末社の順とされる。

摂社、末社の違い
摂社
その神社の祭神と縁故の深い神を祀った神社と区別される。、
  境内摂社(けいだいせっしゃ)=本社の境内にあるもの(または境内社)
  境外摂社(けいがいせっしゃ)=境外に独立の敷地を持つもの。

官国幣社の摂社
  本社の祭神の后神・御子神等、系譜的に連なる神を祀る神社
  本社の祭神の荒魂を祀る神社
  本社の地主神(祭神が現在地に遷座する前に当地に祀られていた神)を祀る神社
  その他、特別の由諸がある神社

末社
それ以外の社とされている。



日本の主な神社
令制国の式内社
新訂増補国史大系を参照した。
総計2861社。

畿内 東海道 東山道 山陰道 南海道 西海道 北陸道 山陽道

宮中・京中 30 伊賀 25 近江 142 丹波 69 紀伊 28 筑前 11 若狭 41 播磨 47
山城 90 伊勢 232 美濃 38 丹後 64 淡路 13 筑後 4 越前 126 美作 10
大和 216 志摩 2 飛騨 8 但馬 113 阿波 46 豊前 6 加賀 42 備前 21
河内 94 尾張 121 信濃 46 因幡 42 讃岐 24 豊後 5 能登 43 備中 18
和泉 53 参河 28 上野 12 伯耆 6 伊予 24 肥前 4 越中 33 備後 17
摂津 62 遠江 60 下野 11 出雲 187 土佐 21 肥後 4 越後 54 安芸 3
伊豆 88 陸奥 100 石見 34 日向 4 佐渡 9 周防 8
駿河 22 出羽 9 隠岐 15 大隈 5 長門 3
相模 13 薩摩 2
武蔵 43 壱岐 24
安房 6 対馬 29
上総 5
下総 11
常陸 27
甲斐 20

合計 545 703 366 530 156 98 336 127
平均(/国) 91 47 50 66 26 9 48 16



現代の神社数
神社数
神社本庁の発表によれば、全国に神社は約8万社(81,166社)あるという。
しかし、末社・摂社を加えれば15万以上になると思われる

都道府県別には新潟県の神社数が最も多く、兵庫県、福岡県がこれに続いている。
最も少ないのは沖縄県であり、和歌山県がこれに次いでいる。

信仰別神社数
  稲荷神社 32000   八幡神社 25000    伊勢神明社 18000   天満宮   14000     諏訪神社  13000   
  厳島神社  9500    宗像神社 6000    日吉・山王   3800   熊野・王子 3000      津島神社   3000
  春日神社  3000   八坂神社  2600    住吉神社    1600    浅間神社  1300     金毘羅神社  700 
  氷川神社  200

  これらの合計で135,000社。


参考資料
「日本の神々 神社と聖地 第7巻 山陰」 (白水社 2007 谷川健一 坂田友宏 川上迪彦他)
「日本古代神社辞典」 (中日出版社 2002 古田和典)
「神社辞典」 (東京堂出版 1997)
「神道の虚像と実像」 (講談社現代新書 2011 井上寛司)

「全国の神社信仰」(ホームページ 社会実情データ図録)

参考リンク
ウキペデイア 「神社の画像一覧」 


 「ファンタジ-米子・山陰の古代史」は、よなごキッズ.COMの姉妹サイトです
   米子(西伯耆)・山陰の古代史   







神社の由来がわかる小事典 (PHP新書)



神道いろは―神社とまつりの基礎知識



狛犬学事始



探究「鎮守の森」―社叢学への招待



全国 神社味詣





全国一の宮めぐり―ビジュアル神社総覧 (Gakken mook)

古代諸国神社神階制の研究



天皇家と神社の秘密―我々は一体何を拝んでいるのか? (メディアックスムック 345)



図解 社寺建築〈各部構造編〉



式内社の神々 神のやしろの起源について



日本の神々 (岩波新書)



新羅の神々と古代日本―新羅神社の語る世界



こんなに身近な日本の神々―神道と私達の文化は、どうかかわっているのか



図説 出雲の神々と古代日本の謎



延喜式 (日本歴史叢書)



祝詞の研究



神社について 米子(西伯耆)・山陰の古代史
神社とは
神道の信仰に基づき作られた、恒設の祭祀施設。
古くは社殿がなくとも「神社」とした。
山(火山)、瀧、岩、森、など多く自然を畏れ「神社(=信仰対象、神)」とみなしたのである。
すなはち現在の社殿を伴う「神社」は、これら神々が祭祀時に御神体から移し祀られた祭殿があって、これが常設化したものだと考えられている。