科学的探究の方法 (放送大学教材)




科学と方法―-科学的認識の成立条件- (1969年)




データはウソをつく―科学的な社会調査の方法 (ちくまプリマー新書)



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歴史研究と科学的方法        
歴史における推論を行う場合、その推論過程の根拠となる事象には、いわゆる科学的根拠がなければならないと思われます。
科学的根拠とは、以下に示す様な科学的方法によって導かれた事象で、かつ再現性・普遍性を有するものでなければなりません。
人文科学に属する歴史学に、自然科学で行われている様な完全な科学的方法が適用出来るか否かという懸念も残りますが、本稿においては可及的にその手法を用いて記載を進めていきたいと考えます。

  [はじめに]科学について   
     1:科学とは   2:科学的方法
  [A]科学的方法のプロセス   
     1:先行研究のリサーチ・目的の明示化   2-1:科学的方法の対象  2-2:実験(調査)
     3:結果   4:考察   5:結論
  [B]歴史研究における科学的方法
     1:歴史と歴史学  2:歴史研究における科学的方法  3:本稿における方法について
[はじめに] 科学について
1:科学とは

科学とは、以下に述べる様な、科学的方法に基づいて得られた学術的な知識、学問の体系である。
広義には、体系化された知識や経験の総称であり、自然科学、人文科学、社会科学の総称である。

科学に求められる要件
 科学的であるためには、次の要件が満たされていなければならない。
  ①再現性
     再現可能な実験内容と手順に従って、異なった実験から同じ結果が得られなければならない。

  ②普遍性
     第3者が違う場所、違う時期に同様な検証を行っても、同じ結果が得られなければならない。

補足
 科学は、現代における最も信頼できる調査、検証、実証、解明などの手段である。
 過去においては以下の方法が用いられていた。
    中世以前・・・神の言葉、占い、など
    近世・・・・・・・人間の理性
    現代・・・・・・・科学


  
2:科学的方法とは

科学的方法
「科学的方法とは、科学的方法のプロセスに従った物事の実証方法である。
すなわち、物事を調査し、調査結果を整理し、新たな知見を導き出し、知見の正しさを立証するまでの手続きであり、かつそれがある一定の基準を満たしているもののことである」

よって、次のような過程を踏んだ、学問の体系であると考えられる。
   ①対象を客観的方法によって観測あるいは調査し、記録する事。
   ②その結果の真偽を、統計学等の手法を用いて検証する事。
   ③真であると立証された結果を帰納的に分析し、一般的・普遍的な規則(仮説)を見出そうとする事。
   ④仮説を実験によって立証する事。
   ⑤立証された規則・法則から、演繹的に、より個別的・特殊的な結論を得る事。

「一定の基準」について
 これに関しては諸説があるが、概ね以下のことが要求される。
   ①その推論過程において、適切な証拠から、適切な推論過程によって演繹されたものとみなせること。
   ②また、定量化が可能で、統計学の見地から見て有意であることも望まれることが多い。


 
3:まとめ

「科学とは、科学的方法のプロセスに従って実証されて獲得された知識・学問の体系である」



[A]科学的方法のプロセス
科学的な調査手法は、「仮説の構築」と「その検証」の延々たる繰り返しとみなせる。
科学的方法は、以下の様なプロセスによってその実証が為される事になる。

1:先行研究のリサーチ、当該研究の目的の明示化

2:実験(=調査)
   ①材料の選択(適切な調査対象の選択)
   ②方法の決定(観測方法の決定)
   ③分析の実施 :予備実験仮説の構築 (新たな知見の導出)及びその解析実証実験(知見の正しさを立証)

3:結果の整理
4:考察
5:結論
6:公表

以下にこれらの詳細を記す。


1:先行研究のリサーチ 目的の明示化
 ①文献検索等による調査
 過去の論文などを検索し、何が解明されており、何が分かっていないのかを調査する。
 自分の知りたいこと(=Reserch Question)を解明するにあたり、有効な手法がないか、あるいは比較、参照する上で有益なデータがないかを調べる。
 ②目的の明示化
 上記の検索によって既知の事象、未知の事象を判別していく。
 その中から証明すべき事実を演繹し、実験仮説、リサーチクエスチョンを設定する。
 以上を踏まえた上で、研究の目的を明示する。


2-1:科学的方法の対象
1:厳密な科学的方法の対象
 科学的方法の対象に対しては「再現性があり定量的な測定が可能」であることが理想的には求められる。
    1)論じる対象を何らかの方法で定量化できるか/否か?
    2)論じる対象を測定することが可能であるか/否か?
    3)再現性がある、あるいは統計的に有意とされる証拠があるか/否か?
    4)推論過程に整合性があるか/否か?

    対象の例:物理学、化学など

2:現代における科学的方法対象の変化(日本教育工学振興会提言)
 しかしながら、現代では厳密な意味での再現性や定量化が難しい対象も科学の対象となってきている。
 この背景には、推測統計学の導入により従来の記述統計をベースとした統計処理だけでは扱い切れなかった対象が定量的に考察しえるようになったことがある。
 定量性・再現性に多少の問題が生じる分野についてもそれに代替しうる論があれば、科学的な方法論の対象とする」という立場が、現在の科学的方法の主流である。
    
    対象の例:医学・薬学・心理学・経済学など

3:さらにもう一段緩やかな立場
 さらにもう一段緩やかな立場として、「論理的な整合性を維持しながら、適切な証拠を集めて議論をするならば科学的である」という立場がある。

    対象の例:その他の学問(おそらく歴史学もこの範疇に含まれる)、日常の様々な現象など


   
2-2:実験(調査)
1:実験(調査)のプロセス
 ①材料の選択
 ②方法の選択

 ③-1:予備実験、基礎検討及びその解析
     実験で使用する材料(資料)および観測機器の選択。あるいは調査対象の抽出。
     実験系の構築。、
     実験の問題点などの評価。
     最適条件の探索のために行う予備実験の実施。

 ③-2:仮説の構築
     観察事象について思索を巡らし、仮説を考案すること。
     仮説とは、推測ではあるが、観察した現象や事実を説明できるものである。
     例えば、なんらかの周期性や法則性などはそれに当たる。

 ③-3:実証実験(結果の正しさを立証) 
     仮説が正しいか、否かを、客観的な形で検証するための実験


2:実験(調査)に求められる要件
(実験計画法の基本的な原則)
 実験に求められる要件としては以下の3つが挙げられる。
 ①局所管理化
    影響を調べる要因以外のすべての要因を可能な限り一定にする。                 
 ②反復
    実験ごとの偶然のバラツキ(誤差)の影響を除くために同条件で反復する。
 ③無作為化ランダム化
    以上でも制御できない可能性のある要因の影響を除き、偏りを小さくするために条件を無作為化する。
      例:実験を行う空間的・時間的順序の影響があるかもしれない。
        よって、決まった順序でなく実験のたびに無作為に順序を決めるなど。
        これは生物学などの実験で特に重要である。
  
3:実験が不可能な事象
 予備実験は、多くの自然科学系研究において実施されるべき必須事項である。
 しかしそれらの中でも、数学、理論物理学などの分野においては実験が不可能で、省略される場合がある。
 あるいは調査対象が定量化も測定も出来ない場合にも実験は不可能となる。
 その場合には、調査と論証がこれに代わりうるものとなる。
 (勿論、論証は科学的手法のすべてのプロセスにおいて必須事項となっている事は言うまでもない)
 論証には帰納と演繹の二種類がある。

 帰納
   実験、調査により得られた個々の結果、つまり特殊な条件での事象に基づいて一般的原理を
   推定する。

 演繹
   一般的原理として認知された法則、あるいは真であると信じられているものを提示する。
   その上にいくつかの仮定をおき、具体的なモデルを考える。
   それに基づいて新たな現象を予測する手法である。

              帰納法              演繹法
      現象A→→(解析)→→原理・法則→→(予測)→→現象B


 通常は、試行錯誤の過程において、帰納と演繹を繰り返し行う


3:科学的方法における結果
1:結果(=証拠)
 実験あるいは調査によって何らかの結果が導き出される。
 その結果を整理し、統計学的手法等を用いて、結果の有意性を判定する。
 有意性が明示され、真(true)であると判定された結果が証拠となる。
 この証拠を根拠として推論が進んでいく。

 すなわち、注意すべき事は、結果とは、イコール結論ではないことである
 結果を根拠にして推論が進み、そして結論が導かれる

       結果(根拠)→→→考察(推論過程)→→→結論

2:証拠の分類
  ①実質証拠
    1)直接証拠
       主要事実を直接的に証明する証拠を、直接証拠という。
    2)間接証拠(情況証拠あるいは傍証)
       間接事実(主要事実を推認させる事実)を証明する証拠を、間接証拠という。

  ②補助証拠
      補助事実(実質証拠の証明力(信用性)に関する事実)を証明する証拠を、補助証拠という。
    1)増強証拠
       実質証拠の証明力を高める補助証拠
    2)弾劾証拠
       実質証拠の証明力を低下させる補助証拠
    3)回復証拠
       弾劾証拠によって弱められた実質証拠の証明力を回復させる補助証拠。

3:科学的根拠の信頼レベル
1990年にGordon GuyattによりEBM (Evidence-based Medicine)という概念が提唱された。
これは治療効果・副作用・予後の臨床結果に基づき医療を行うというもので、医学誌の過去の臨床結果などを広く検索し、時には新たに臨床研究を行うことにより、なるべく客観的な疫学的観察や統計学による治療結果の比較に根拠を求めながら、患者とともに方針を決めて治療を行うというものである。
すなわち、エビデンス(臨床結果)に基づく医療である。

ここでいう科学的根拠の信頼度は、以下の様に分類されている。

  根拠の強さの分類
    グレードA : 言いきれる強い根拠がある
     (recommendation based on evidence from multiple randomized trials or meta-analyses

    グレードB : 言いきれる根拠がある
    (recommendation based on evidence from a single randomized trial or nonrandomized studies

    グレードC : 言いきれる根拠がない
    (recommendation based on expert opinion, case studies, or standards of care.)

本稿では、便宜的にこのレベル分類を、根拠の信頼度として適用することとする。


4:科学的方法における考察(推論過程、論証)
1:科学的論証
 科学的な論証の特徴としては次の三つが挙げられる。
  ①適切な証拠への依存
  ②明確な結論の存在
  ③証拠と結論を結ぶ適切な推論過程の存在

2:考察

 結論と、実験結果の間には、なんらかのギャップがあることが通常である。
 そのため、必要に応じて、他の理論や既に公表された他の実験データ等を援用し、証拠を補完する必要がある。
 その間を結ぶものが考察となる。
 すなわち、証拠と結論を結ぶ適切な推論過程が考察である。
 そして、考察における推論過程では、論理的な証明が為されなければならない。

2:論証の方法
 ①直接証明法
    P⇒Q を証明したいとき、P⇒Q を直に証明すること。
 ②間接証明法
    P⇒Q が真であることを直接証明する代わりに、P⇒Q と同値(等価)な別の命題が真であることを
    証明する方法。

    1)対偶法 :命題 P⇒Q を証明する代わりに、これと同値な ¬Q⇒¬P を証明する方法(¬は否定)。
    2)背理法 :命題 P⇒Q を証明する代わりに、P∧¬Q を仮定して矛盾を導く方法(∧ は連言)。
    
    補)同値とは
      同値(どうち)または等価(とうか)とは、2つの命題が共に真または共に偽のときに真となる。
      論理演算である。 
        命題 P と命題 Q に対して、P⇒Q のとき、
        P は Q であるための十分条件  Q は P であるための必要条件であるという。
        P⇒Q の逆 Q⇒P でもあるとき、Q は P であるための(または P は Q であるための)
        必要十分条件、または命題 P と Q は同値であるという。


3:論理の飛躍
 ①論理の飛躍とは
    証拠と結論を結ぶ適切な推論過程であるはずの考察において、それが曖昧な場合を論理の飛躍と呼ぶ。
 ②論理飛躍の原因
    法則の適用範囲を勝手に広げる
    数学上の制約を無視
    実態とは合わない近似
    必要条件と十分条件の意図的な混同
    強引なモデル化強引な仮定を認める


5:科学的方法における結論
1:結論
 結論の提示は現実の物理現象、社会現象などを定性的and/or定量的に説明する具体的なモデルの提示という形で行われることが多い。
 モデルの良し悪しは、明確であることが求められると同時に、扱いやすさ、どれだけ多くの現実を説明できるかにかかっている。

2:反証可能性

 反証可能性とは、その仮説が何らかの観測データによって反証されうることを意味する。
 反証主義によれば、この可能性を有する仮説のみが科学的な仮説である。
 科学理論は反証可能性を持ちつつ、未だ反証されていない仮説の総体であると定義される。
 そして、厳しい反証テストに耐え抜いた仮説ほど、より信頼性が高いものとみなされる。


6:公表
1:科学的学術論文の構成
 ①論文の構成

  以上ような理由で、一般的な科学的学術論文は以下のような構成からなっている。
     ①緒言(既知と未知の事象を提示し研究の目的を明示する)
     ②材料(対象)と方法
     ③結果
     ④考察
     ⑤結論

 ②論文の査読
  現代の学術論文の場合、必ずその論文は識者によって査読(診査)される。
  信頼性の低い内容の論文は、その問題箇所を指摘され、訂正、あるいは追加実験の必要等を指示される。
  場合によっては掲載を拒否される。
  この診査の厳格性が論文の質(=信頼度)となる。

2:再検証
 公表された論文の内容は場合によって他の研究期間で検証される。
 その時、科学の要件である「普遍性」が無ければ、同様な結果が得られないことになる。



[B]歴史研究における科学的方法
1:歴史と歴史学
歴史学とは、過去の史料を評価・検証する過程を通して歴史的事実、及びそれらの関連を追究する学問である。

1:一般的な歴史学の研究方法
 研究対象となる歴史書などが既に編纂されている史料の場合には、著述者の立場により意図的な編纂が加えられている場合もある。
 従って歴史学において史料批判は欠かせない作業となる。
 史料批判とはその史料が信頼できるものなのか、信頼できるとしてどの程度信頼できるのかを見定める作業である。
 例えばある事件について、史料Aと史料Bが矛盾している場合、両方の史料の性格を考え、どちらが正しいか確定してゆく作業が含まれる。

2:歴史と歴史学
 歴史とは、過去における人間社会の変遷を記録したものである。
 その記録媒体は、文書であったり、木簡であったり、あるいは碑分であったりと多様である。
 いずれにせよ文字(あるいは記号)が関与するわけだが、そこには何らかの人の意志が介在するため、必ずしも真実を伝えているとは限らない。
 そのため、真実の歴史を知るためには、歴史学だけではなく、以下の様な集学的な学問の連携が必要になると思われる。

  ①歴史学・・・・・記録された文書を研究。
  ②考古学・・・・・残された遺跡、遺構、遺物等を研究。
  ③民俗学・・・・・
  ④自然科学・・・地質学、生物学(DNA解析の分野など)、物理学(炭素14法)
  ⑤その他・・・・・地政学、言語学、などなど


2:歴史研究における科学的方法

 本稿における対象は、歴史であって、歴史学ではない。

 前述した様に、厳密な科学的方法の対象としては以下のことが要求される。
    ①再現性がある事
    ②定量的な測定が可能であること

 しかし、これを完全に適用すると、歴史は科学的な対象とはなり得ない可能性が生じる。
 
 従って、現代では主流となっている、定量性・再現性に多少の問題が生じる分野についてもそれに代替しうる論があれば、科学的な方法論の対象とする、という立場を取りたいと考える。

 上記のような観点に立って、以下の様なプロセスで歴史の科学的検証を行いたいと考える。

  1:先行研究のリサーチ、当該研究の目的の明示化

  2:実験(=調査)
     ①材料の選択:歴史研究における材料は文献的史料、考古資料、伝承など。
     ②方法の選択:史料批判方法、統計学、自然科学的方法など。
     ③分析:材料の中から個々の事象を取りだし上記の方法で検証し真偽判定を行う事。

  3:結果の整理
     「真と判定された分析結果」の整理。

  4:考察
     結果を根拠にして新たな知見を推論すること。

  5:結論
     得られた結果から、何らかの結論(あるいは新たな仮説)を導き、新たな知見とする事。
     この結論は、再び科学的方法によって検証されなければならない。 


3:本稿における米子・山陰の古代史の研究方法について
以上のような方法で、米子・山陰の古代史について考証を進めたいと思います。
すなわち、我田引水的な憶測に頼ることなく、先ずは、「真」と考えられる対象を検索し、その上に科学的と認められる方法を用いて検証を進めていきたいと考えます。
  
尚、これに関する詳細は次項、「ファンタジー米子山陰の古代史」制作方法概要に記載致します。

                      次ページ  「ファンタジー米子山陰の古代史」制作方法概要へ


参考文献・書籍等
「科学的な見方・考え方」  濱田 嘉昭著   放送大学教育振興会出版
「医学論文の書き方」
「実験科学の方法」      放送大学講義録


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