四隅突出型墳丘墓
四隅突出型墳丘墓(よすみとっしゅつがたふんきゅうぼ)とは
弥生時代中期から吉備・山陰・北陸の各地方で行われた墓制。
方形墳丘墓の四隅がヒトデのように飛び出した特異な形の大型墳丘墓で、その突出部に葺石や小石を施すという墳墓形態をいう。
山陰地方東部から北陸地方南部にかけての首長の間に強い結びつきがあり、政治的勢力の同盟関係があったのではないかとと推測をさせる遺跡である。
図は鳥取県埋蔵文化センターHP
  「四隅突出型墳丘墓」より引用


  左図=阿弥大寺墳丘墓群

  右図=洞ノ原墳丘墓群

島根県出雲市西谷:西谷墳墓群史跡公園


起源
弥生中期後半(BC100−AD50頃)
広島県の三次盆地に発祥したという。
ここは江の川をさかのぼった中国山地の山あいに相当する。

(参照
  書紀 巻一 第八段 一書第一  「一書曰。素戔鳴尊自天而降到於出雲簸之川上」
  書紀 巻一 第八段 一書第二  「一書曰。是時素戔鳴尊下到於安芸国可愛之川上也」
         書紀の巻一 第八段一書第二では素戔鳴尊の降臨地は江の川の上流としている。)

弥生時代後期前半(AD50−180頃)
この時期になると日野川を下り、妻木晩田遺跡の洞ノ原2号墓を端緒にして、伯耆地方を中心に一気に分布を広げる。
規模も少しずつ大きなものが造られるようになり、突出部も急速に発達していった。

弥生後期後半(AD180−AD250頃)
分布の中心を出雲地方に移して墳丘の一層の大型化が進むとともに、分布する範囲を北陸地方などにも広げていった。
しかし、弥生時代の終わりとともに忽然とその姿を消してしまう。
北陸では少し遅れ能登半島などで造られている。
源流は今のところ判明していないが、貼り石方形墓から発展したという可能性もある。

日本海側を中心に約90基が確認されている。
北陸地方(福井県・石川県・富山県)では現在までに計8基が知られている。



各地の四隅突出型墳丘墓
島根大学渡邊貞幸名誉教授作成表を改変
注釈あり
  「時期については弥生時代を I 期から VI 期に分ける考え方を採用した。
  IV 期は中期後葉、V 期が後期、VI 期は終末期でほぼ庄内式に併行する時期である。
  可能な場合は、V 期は3時期に、VI 期は2時期に分けた」

広島県・岡山県の四隅突出型型墳丘墓
    所在地 旧国   遺跡名  規模(m)   時期   備考
1 広島県三次市南畑敷町 備後 宗祐池西1号 10×5 IV期  
2 広島県三次市南畑敷町 備後 宗祐池西2号 3.8× IV期  
3 広島県三次市四拾貫町 備後  陣山1号 5.2×3.5 IV期  
4 広島県三次市四拾貫町 備後  陣山2号 12.7×6.3 IV期  
5 広島県三次市四拾貫町 備後  陣山3号 6×3.6 IV期  
6 広島県三次市四拾貫町 備後  陣山4号 9×4.6 IV期   
7 広島県三次市四拾貫町 備後  陣山5号 4.5×3 IV期  
8 広島県三次市大田幸町 備後 殿山38号 13×6.5 IV期  
9 広島県三次市大田幸町 備後 殿山39号      未調査
10 広島県三次市東酒屋町 備後  矢谷1号 18.5×12 VI 期  長方形?
11 広島県三次市粟屋町 備後 岩脇「1号」       ?
12 広島県三次市粟屋町 備後 岩脇「2号」         ?
13 広島県庄原市宮内町 備後 佐田峠3号 15.3×8 IV期〜V期−1  
14 広島県庄原市高町 備後 佐田谷1号 19××14 V期−1  
15 広島県庄原市山内町 備後 田尻山1号 11×9 V期−1  
16 広島県北広島町南方 安芸 歳ノ神3号 10.3× V期−2  
17 広島県北広島町南方 安芸 歳ノ神4号 10.2× V期−2  
18 岡山県鏡野町竹田 美作  竹田8号 14× V期−1〜2   ??
島根県出雲市・松江市周辺の四隅突出型型墳丘墓
19 島根県邑南町下亀谷 石見 順庵原1号 11.5×9 V期−2  
20 島根県隠岐の島町西町 隠岐  大城 18×11 V期-3〜VI 期-1  
21 島根県出雲市大津町 出雲  西谷1号   V期−3  
22 島根県出雲市大津町 出雲  西谷2号 35×24 V期−3  
23 島根県出雲市大津町 出雲  西谷3号 40×30 V期−3  
24 島根県出雲市大津町 出雲  西谷4号 32×26 V期−3   
25 島根県出雲市大津町 出雲  西谷6号 17× VI 期  
26 島根県出雲市大津町 出雲  西谷9号 43×33 VI 期  
27 島根県出雲市中野町 出雲 中野美保1号 11×9.5 V期−3  
28 島根県出雲市東林木町 出雲  青木1号 14×10? V期−3  
29 島根県出雲市東林木町 出雲  青木2号 VI 期  
30 島根県出雲市東林木町 出雲  青木3号      
31 島根県出雲市東林木町 出雲  青木4号 17× IV期?  
32 島根県松江市鹿島町 出雲 南講武小廻    VI 期   ?
33 島根県松江市玉湯町 出雲 大谷V1号 10.7×7.4 V期−3  
34 島根県松江市玉湯町 出雲 大谷V2号 4.5以上× V期−3   
35 島根県松江市玉湯町 出雲 大谷V3号 3以上×     
36 島根県松江市浜乃木町 出雲  友田 12× V期−1?   ?
37 島根県松江市西津田町 出雲 東城ノ前1号 7.1×6.2    
38 島根県松江市西津田町 出雲 東城ノ前2号 11以上×8以上 V期−3   ?
39 島根県松江市西津田町 出雲 東城ノ前3号 18×12    
40 島根県松江市西津田町 出雲 東城ノ前4号     ?
41 島根県松江市矢田町 出雲  来美 10×8 V期−3  
42 島根県松江市矢田町 出雲 間内越1号 8.8×6.7 VI 期  
43 島根県松江市矢田町 出雲 間内越4号 16.5×9.7 V期−3   ?
44 島根県松江市八幡町 出雲  的場 13以上× V期−3   ?
45 島根県松江市坂本町 出雲  沢下5号 7×6 V期-3〜VI 期-1  
46 島根県松江市坂本町 出雲  沢下6号 12×11 V期-3〜VI 期-1  
47 島根県東出雲町出雲郷 出雲 大木権現山1号 23×12 VI 期−2   ?
島根県安来市周辺の四隅突出型型墳丘墓
48 島根県安来市西赤江町 出雲 仲仙寺8号 18×14    未調査
49 島根県安来市西赤江町 出雲 仲仙寺9号 19×16 V期−3  
50 島根県安来市西赤江町 出雲 仲仙寺10号 19×19 V期−3  
51 島根県安来市西赤江町 出雲  宮山IV号 19×15 VI 期−2  
52 島根県安来市西赤江町 出雲 安養寺1号 20×16 VI 期−2  
53 島根県安来市西赤江町 出雲 安養寺3号 30×20    
54 島根県安来市久白町 出雲 塩津山6号 29×26    未調査
55 島根県安来市久白町 出雲 塩津山10号 34×26    未調査
56 島根県安来市西赤江町 出雲  下山 20×17 VI 期?  未調査
57 島根県安来市伯太町 出雲 カウカツE-1の1号 11×7 V期−3  
鳥取県西部(米子市周辺)の四隅突出型型墳丘墓
58 鳥取県米子市尾高 伯耆 尾高浅山1号 10×7 V期−1   
59 鳥取県米子市日下 伯耆  日下1号 10×7 V期−2  
60 鳥取県伯耆町父原 伯耆  父原1号 12× VI 期−2  
61 鳥取県伯耆町父原 伯耆  父原2号 9.5×6 VI 期−2  貼石なし
62 鳥取県米子市淀江町 伯耆 洞ノ原1号 6.5×5.4 V期−1  
63 鳥取県米子市淀江町 伯耆 洞ノ原3号 4.2×3.9 V期−1  
64 鳥取県米子市淀江町 伯耆 洞ノ原4号 4.3×3.6 V期−1  
65 鳥取県米子市淀江町 伯耆 洞ノ原5号 2.1×2.0    
66 鳥取県大山町富岡 伯耆 洞ノ原7号 4.4×4.0 V期−1  
67 鳥取県大山町富岡 伯耆 洞ノ原8号 4.9×4.4 V期−1  
68 鳥取県大山町富岡 伯耆 洞ノ原9号 2.0×1.1 V期−1 墓上施設か
69 鳥取県大山町富岡 伯耆 洞ノ原10号 2.0×1.6   墓上施設か 
70 鳥取県米子市淀江町 伯耆 洞ノ原11号 1.6×1.3   墓上施設か 
71 鳥取県米子市淀江町 伯耆 洞ノ原12号 1.3×1.2   墓上施設か 
72 鳥取県米子市淀江町 伯耆 洞ノ原13号 1.4×1.3   墓上施設か 
73 鳥取県米子市淀江町 伯耆 洞ノ原16号 1.5×   ?墓上施設か
74 鳥取県米子市淀江町 伯耆 洞ノ原17号 1.5×1.3   ?墓上施設か
75 鳥取県大山町富岡 伯耆  仙谷1号 13×13? V期−2  
76 鳥取県大山町富岡 伯耆  仙谷2号 7.4×7.1 V期−2  
77 鳥取県大山町長田 伯耆  徳楽 19×19 VI 期−2  未調査
鳥取県中部(倉吉市周辺)の四隅突出型型墳丘墓
78 鳥取県倉吉市上神 伯耆  柴栗   V期−2   ?
79 鳥取県倉吉市下福田 伯耆 阿弥大寺1号 14× V期−2  
80 鳥取県倉吉市下福田 伯耆 阿弥大寺2号 V期−2  
81 鳥取県倉吉市下福田 伯耆 阿弥大寺3号 V期−2  
82 鳥取県倉吉市山根 伯耆  藤和 10×8.5    
83 鳥取県湯梨浜町宮内 伯耆  宮内1号 17× V期−2  
鳥取県東部(鳥取市周辺)の四隅突出型型墳丘墓
84 鳥取県鳥取市桂見 因幡  西桂見 40以上× V期−3  
85 鳥取県鳥取市国府町 因幡  糸谷1号 14×12 VI 期−2  
兵庫県の四隅突出型型墳丘墓
86 兵庫県加西市網引町 播磨 周遍寺山1号 9.5×6     ??  
87 兵庫県小野市船木町 播磨  船木南山 14× V期?   ??  
北陸・東北地方の四隅突出型型墳丘墓
88 福井県福井市清水町 越前 小羽山30号 26×22 V期−3  貼石なし
89 福井県福井市清水町 越前 小羽山33号 7×5 V期−3 ?貼石なし
90 福井県福井市高柳町 越前  高柳2号 6.2×5.5 VI 期−1  貼石なし
91 石川県白山市一塚町 加賀  一塚21号 18×18 VI 期−1  貼石なし
92 富山県富山市婦中町 越中  富崎1号 20×20 VI 期−2  貼石なし
93 富山県富山市婦中町 越中  富崎2号 20×20 VI 期−2  貼石なし
94 富山県富山市婦中町 越中  富崎3号 22×21 V期−3  貼石なし
95 富山県富山市婦中町 越中  六治古塚 24.5× VI 期−2  貼石なし
96 富山県富山市婦中町 越中  鏡坂1号 24.1× VI 期−1  貼石なし
97 富山県富山市婦中町 越中  鏡坂2号 13.7× VI 期−1  貼石なし
98 富山県富山市杉谷 越中  杉谷4号 25×25 VI期−2  貼石なし
99 富山県富山市古沢 越中 呉羽山丘陵No6 19×19    未調査
100 富山県富山市古沢 越中 呉羽山丘陵No10 23.5×22    未調査
101 富山県富山市金屋 越中 呉羽山丘陵No18 25×23    未調査
102 福島県喜多方市塩川町 石背 舘ノ内1号周溝墓 9×8 弥生末〜古墳初 四隅突出型方形周溝墓
103 福島県喜多方市塩川町 石背 荒屋敷4号遺構 12× 弥生末〜古墳初 四隅突出型方形周溝墓


四隅突出型墳丘墓の発達地域とその時期
四隅突出型墳丘墓は、出雲地方を中心として山陰で多く造られた弥生時代の墳丘墓とされている。
しかし、上記表よりその経時的変化を眺めると、概ね以下の様になる。

  三次(W期)→伯耆・因幡(X期1,2)→出雲(X期2,3)→北陸(Y期)→東北(古墳前期)

すなわち、出雲地方より伯耆地方の発達時期の方が早い。
また、丹波・但馬・若桜地方には存在しない。

詳細は 結果:考古資料の分析結果−遺跡分布の経時的変化へ


図は鳥取県埋蔵文化センターHP「四隅突出型墳丘墓」より引用




この図を参照させて頂くに当たり、これを作成された方々のご尽力に心より敬意を表します。
おそらく、莫大な時間と人手、想像を絶する根気、たゆまぬ努力などなどの上にこの1枚の図が完成したことと思います。

そしてこの図を見たときに、西伯耆の古代像が何かしら垣間見えたような気がしたことをつけ加えます。



山陰地方の四隅突出型墳丘墓
山陰地方の四隅突出型墳丘墓の特徴
最も発展した時期
島根県安来市荒島地域にある仲仙寺(ちゅうせんじ)8・9号墓(十数個の碧玉製管玉)
宮山4号墓(鉄刀)
安養寺1・3号墓など

副葬品や小石から貼り石へと構造の変化に発展系列がみられ、古墳時代の先取りをした高度な土木技術が用いられている。

3世紀前後の時期の代表的大型墳丘墓
島根県出雲市の西谷3号墓(最長辺約50メートル)・4号墓・9号墓
前述した安来市の荒島墳墓群(宮山、仲仙寺、塩津山墳丘墓)
鳥取県の西桂見墳丘墓

これらの大規模な墳丘墓と吉備の楯築墳丘墓がほぼ同時期に存在したと推測されている。
そして、西谷3号墳丘墓の埋葬施設が楯築墳丘墓のそれと同じような構造の木槨墓であり、埋葬後の儀礼に用いた土器の中に吉備の特殊器台・特殊壺や山陰東部や北陸南部からの器台・高杯などが大量に混じっていた。


山陰と北陸との関係
山陰の四隅突出型は、突出部に1メートルくらいの石を使っているものがあるが、北陸の四隅突出型は石を使っていない。
四隅突出型が似ているということは、山陰地方東部から北陸地方南部にかけての首長の間に強い結びつきがあり、政治的勢力の同盟関係があったのではないかと推測できる。
さらに、吉備の場合も同様なことが考えられる。



参考資料
「四隅突出型墳丘墓謎に迫る」(出雲市教育委員会編 1995)


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山陰弥生墳丘墓の研究

四隅突出型墳丘墓    
四隅突出型墳丘墓は、出雲神族に特有の墓制であるとも言われている。

四隅突出型墳丘墓の謎に迫る―出雲・西谷墳墓群シンポジウム